音楽レビュー Madonna

Rebel Heart (2015)


(★★★★☆ 星4つ)

スタジオアルバムとしては13作目。Madonnaのアルバムを聴くといつも印象として挙がってくる点は3つ。そしてそれら後述する3つは、この”Rebel Heart”にもあてはまる。

まず、時代感をアルバムに色濃く反映したものであること。これは、より正確に言うと、イメージ的にはその時代を先取りし牽引してきたかのように見える彼女の作品は、実は音楽的にはいつもトレンド迎合型だったということができるだろうということ。
ヒット作の代名詞のように挙げられる”Vogue”も、当時クラブに通っていた人ならば、bumpyなピアノのシンコペーションは使い古された感さえあるモチーフだと知っているし、”Music”にしろ、”Confessions On The Dance Floor”にしろ、突き抜けた何かがある訳ではなかった。それはポップクイーンたろうとするからこそ王道を外してはいけないということからくるものなのかもしれない。
本作では共同ライターやプロデューサーにAviciiやKanye Westなどを迎え、外すことのない音作りには成功している。しかしそれは、他の誰かがやってもいい楽曲であることにもなるのだが。Katy Perryあたりもやりそうなことや、Gwen Stefaniもかくやという音、そして”MDNA”からの承継を更に現代風EDMに解釈したダンスチューンなど。

次に、常にどこかに自意識を過剰なまでに反映させた、少し影のある音楽であること。Madonnaのアルバムはどれも、初期のアルバムでさえ、どこか社会と自我の煩悶の影がある。それがMadonnaを単なるポップシンガーでなく、社会的に君臨する存在にさせてきたのだろう。今となっては曲自体がセンセーショナルであることはもうありえないのかもしれないが、自分自身がセンセーションであった歴史を携えていれば、自意識だけで存在意義をアピールすることによって作品に陰影をもたせることは可能なのだろう。本作に収録の”Bitch I’m Madonna”は、陰影というよりは悪しき自意識かもしれないが、それを分かっていてやるのと、やらされて無自覚にやるのとは違う。Madonnaはそのことが分かっている。

そして、いつも歌自体はそううまくないこと。聴けばすぐMadonnaと分かる声は武器だが、歌唱力の点では見るべきものはない。声に食傷気味になると、歌のうまさがなければ、プレイリストから外され気味になる危険はある。その意味で、俺自身はMadonnaをあまり聴きこんでこなかった。そしてこのアルバムも、トレンドを過ぎ、時代の布石としての意味を失ってからいつまで聴かれるのかと思うと、厳しいところはある。

しかし、間違いなくMadonnaはMadonnaだと思わせる一作。聴いて大収穫とは思わないだろうが、知っておくべき音のクロニクルだ。(2015/3/15 記)

MDNA (2012)


(★★☆☆☆ 星2つ)

音楽界への影響力の強さや、音楽界に留まらないメジャーな浸透力は認めるのだが、興味を持って聴いていたのは”Bedtime Stories”までで、”Ray Of Light”以降はあまり興味が持てなかった。”Bedtime Stories”もかなり古いアルバムなので、結局マドンナの曲は聴いていながらこのWebサイトにページを割くことはなかった。

さて、”MDNA”だが、今回の作品には、ダンスミュージックを制する意地があるように思える。Lady Gagaへの対抗心はよく噂されるところだし、今年(2012年)のNFLハーフタイムショーのオープニングはイメージソース的にKylie Minogueに対しても対抗しているように見えた。(敵対視やライバル視はしていないだろうが)

ひるがえってこのアルバム。これを聴いてみて、結局どういう世界を作り出したかったのかと疑問に思った。ダンスミュージックのスタイルとして、よくありがちな打ち込みエレクトロサウンドで満たしているだけで、何がMadonnaなのか、主体性が見えてこない。あの、相変わらず大して上手くないボーカルがアイデンティティーなのか? 音はベルリンテクノが流行った頃からの総おさらいのようだし、Nicki MinajやLMFAOの脳天気が加わることは音楽を軽薄にするだけだ。(彼女や彼ら単体でならそれはそれで生きる世界があると思うが)

歌詞といえば、収録曲中の”Gang Bang”は飛び抜けてひどい。卑語を連発したいがためにあるような曲で、Madonnaが時折見せるよくない部分が増幅されてしまっている。50を過ぎて尖っているのは結構だが、やり方というものがあるのではないか。理解しようとこのアルバムを3、4回は聴いたが、これ以上自分の楽しみとして聴きたくはない感じだ。

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