音楽レビュー Duran Duran


All You Need Is Now (2011)


(★★★☆☆ 星3つ)

80年代MTV世代の回顧企画では必ず筆頭に上がるDuran Duranだが、1978年に結成して以降、結局5 decadesを生き抜いたことになる。(以前Duran Duranはヒット曲の集大成としてのベスト盤を”Decades”という名前で1989年に出している)そんな彼らが’10年代にどんな音を届けるのだろうと、今回のこれを聴いたが、Duran DuranはDuran Duranだなあという感じだ。

それは、彼らがブリティッシュバンドであることを意識させるようなブリティッシュロックっぽい音であることと、ニューロマンティックと称された時代のエレクトロな音(Roland 808や、Junoや、シモンズドラムといった懐かしい、その当時は新鮮で多用された音)から成る。

曲にしても音作りとしても、かつてのヒット時代をシミュレートしすぎではないかと思われるような感じで、”Girl Panic”という曲はかつての”Girls On Film”(邦題『グラビアの美少女』笑)を誰もが思い出さずにはいられない感じだし、”Save A Prayer”調や”New Moon on Monday”のようなドラムパターンとか、Duran Duranオンパレードで、それは確かに彼ら自身が創り出した音だから、オリジナルではあるのだが、決定的に違っているのは、それはその当時は全力で新しいことを生み出した結果としての音だったということ。
今はその遺産をなぞって作られていて、クリエーションとしての必死がそこにはないのではないかと、聴きながら感じられた。それは何だか悠々自適といえば聞こえはいいが、アーティストは自らをも否定して次へ次へと進んでいかねばならないのではないかと思うと、何だかやっぱりこのニューアルバムを聴いても、Duran Duranは懐かしのバンドという印象のままだった。そう思うと、アルバムタイトルが何だか皮肉なものに思えてくる。