音楽レビュー Darlene Love


Introducing Darlene Love (2015)


(★★★☆☆ 星3つ)




遂に出た。「あの」Darlene Loveのファーストアルバムだ。映画『バックコーラスの歌姫たち』で、ショービジネスの難しさ、音楽業界の権利関係を牛耳る者達の悪辣さについて、苦々しく語りつつも、同時に人生を賭して心酔する音楽という魔物への憧憬を語った、伝説のバックシンガーである。
苦節何年、とはよく言うが、この人の下積みに比べれば大抵の苦節は苦節ではないかもしれない。何せ、初レコーディングが60年代前半。それから半生記を経てのデビューアルバムが、今年やっと出たのだ。(本人名義のレコーディングソングは60年代にあったが、それからのキャリアはあくまで影武者で、アルバムが出たのはこれが初めて)

それについては、もう敬意と共に祝福の拍手を送るしかない。そして、肝心の音だが、古き良きアメリカというか、クラシックなアメリカンダイナーのジュークボックスから流れてくるのが似合うような曲調。声はさすがに良くコントロールされている。これがアメリカのポピュラー音楽を支えてきたのだなあと感慨深いが、自分の好みの音ではない。このアルバムが2015年に出た音だというのは少し懐古趣味にすぎるが、Darlene Love本人にしてみれば、こういう音が旬だった時に、自分が輝いていた(いたかった)のだろう。その心情を酌むに、古すぎると一蹴はできない。

好みか好みでないかというところであくまで個人的感想として星3つとしたが、このアルバムには、プロ魂と、アメリカのポピュラー音楽の歴史と、1人の人間の誇り高き人生が詰まっている。敬服。(2015/9/25 記)