音楽レビュー Sade


Bring Me Home: Live 2011 (Blu-ray & DVD) (2012)


オーディオバージョン
(★★★★★ 星5つ)

Sadeのツアー(残念ながら今回も日本には来なかった)を収めたライブ映像。スタイリッシュを極めたビジュアルと音楽を堪能できる。端正不在の時代にあって、こんなにかっこ良さを追求して実現できてしまう人(バンド)が他に存在するだろうか? 1曲1曲、観るごとに「すごい…」と嘆声が漏れる。

モノクロの衣装で統一したメンバーは、Aduだけでなく誰もが、この4半世紀何も経年変化を受けていないように見える普遍美ともいえる姿でステージに立っている。ステージ構成もまず音ありきなシンプルな作りだが、ミニマリズムではなく、芳醇で、様々な光景を見せてくれる。映像の使い方もうまい。

Aduのボーカルだが、最初のうちは少し声が出にくいのかと思える。が、後半は俄然輝いてくる。圧巻はやはり、”Is It A Crime?”だろう。オリジナルよりもやや落としたテンポで、あの世界で観客を圧倒する。アメリカまで観に行けば良かった。(2012年6月6日 記)

The Ultimate Collection (2011)


(★★★★☆ 星4つ)



Sadeの2枚目ベストアルバムが今(これを書いている2011年5月)発売されたのは、ツアーをやっているテコ入れだろうか、それともレコード会社との契約だろうか。いずれにせよ、1984年から現在までに渡って曲をピックアップして通して聴いても違和感がないのは、Sadeのタイムレスな魅力をあらためて感じる。

既発の曲に馴染んでいる人にとって、これを聴く価値があるのは、2枚組のうちの2枚目11曲目からの未発表曲(リミックス含む)5曲。Jay-Zがフィーチャーされた”The Moon and The Sky”のリミックスは、SadeよりもJay-Z色が強く、ヒップホップに振られて積極的に聴き返す気にならないが、他はSadeはいいなと素直に思わせてくれる。Sadeの音楽が趣味ならば押さえておきたい。

Soldier Of Love (2010)


殿堂入り作品

10年を経て久しぶりに届けられた珠玉の10曲は、最近の他のアーティストのアルバムを聴きなれていると、あっけなく終わってしまう。しかしその時間は、濃密。流されないスタイル、詩情あふれる情景を描き出す世界観、Sadeの声。すべてが「これを待っていたんだ」と思わせる出来。完璧。

Lovers Rock (2000)


殿堂入り作品

前作”Love Deluxe”から待つこと長らく8年後に発売されたSadeの5作目(ベスト盤除く)。力の抜けた自由な音と世界。しかし”Slave Song”のようなしっかりした社会的視点を織り込んだ曲もある。

Love Deluxe (1992)


殿堂入り作品

“Deluxe”と銘打たれた中身は、虚飾に陥ることなく歌で訴える本質を追求した豪奢さと思われる。この後、Sadeは次作”Lovers Rock”の発表まで長い沈黙に入るが、その沈黙の間を堪え得るクオリティの高さを持っている。

Stronger Than Pride (1988)


殿堂入り作品

後にホワイトレーベルでのハウスリミックスがクラブシーンで話題にもなった”I Never Thought I’d See The Day”を始め、よりそぎ落とされ、精神性の高まったSadeのサードアルバム。シングルカットされた曲のプロモーションビデオも美しい。

Promise (1985)


殿堂入り作品

セカンドアルバム。ゴージャスでお洒落な音作り。それから日本はバブル経済期を向かえ、Sadeのアルバムは長く町のあちこちで聴かれたが、その時代が過ぎてもSadeの曲達は色褪せず、美しい。

Diamond Life (1984)


殿堂入り作品

ファーストアルバム。最初のシングルカットは”Your Love Is King”だったが、タイトルカットのセカンドシングル”Diamond Life”が超ヒット。アルバム収録曲はわずか9曲ながら、完成された世界を見せてくれる名盤。