音楽レビュー Regina Belle


The Day Life Began (2016)


(★★★★★ 星5つ)




Regina Belleは俺の中でとても上位に位置する名歌手で、長年聴き続けている。しかし、日本人にRegina Belleといってもピンと来ない人が多いだろう。あれだけ結婚式場で多くの人が聴いているというのに。そう、ディズニー映画『アラジン』のテーマ曲”A Whole New World”の女性だ。ついでに言うと、男性歌手のPeabo Brysonも敬愛するシンガーなのに日本では名前があまり知られていない。これまた残念至極。

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さて、Regina Belleだが、1987年の“All By Myself”
、1989年の“Stay With Me”
などでシックなクワイエット・ストーム調の曲で洗練された圧倒的歌唱力を見せつけてアルバムがヒットし、”A Whole…”に結びついたわけで、”A Whole…”が収録されている“Passion”
(1993年リリース)もそうしたシックなイメージが色濃くあり、あの曲がむしろ例外的なものだったのだが、その後もアルバムを発表し続けており、一発屋ではない。
ただ、このアルバムの前2作はいずれもゴスペルで、ポピュラーR&Bフィールドに帰ってきたのは2004年の“Lazy Afternoon”以来。何と12年ぶりになる。

肝心の本作だが、素晴らしい。流行りに流されないかっちりしたオーケストレーションはまず安心感を与えるが、何と言ってもボーカルが健在なことが白眉。強い喉を活かしながら少し声を絞ってつぶすような歌い方をする箇所があるのが新しいが、基本的な歌い方は正統派で、端正さを失っていない。あのPhyllis Hymanの名曲”You Know How To Love Me”のカバーも原曲の美しさを保ちながらなおかつ新しい価値を与えている。フィリーソウルの名曲カバー集のアルバム“Reachin Back”
のスタイルを想起させる”Open Our Eyes”など、グルーヴ感を楽しめる曲もあって、キャリアを積んでもメロウだけで押さないバランス感も絶妙。

このアルバムは、R&B/ソウルの真髄、本物の歌とはこういうものだということを体験させてくれる。音楽が好きだと言うなら、こういうのを聴いてもらいらいものだ。(2016/1/29 記)