音楽レビュー India.Arie


Worthy (2019)


(★★★★★ 星5つ)




India.Arieの何が素晴らしいかというと、ソングライティングや歌唱力はもちろんなのだが、愛に溢れている点だ。人間愛、慈愛、言い表し方は様々だが、聴き手の心に暖かい火をぽっと灯すような思いやりに、聴いていてほっとすると共に、心洗われる思いがする。

なので、ニューアルバムが出たとの記事を読み、そのタイトルが”Worthy”と知って、その姿勢変わらずと、嬉しく思った。そして、聴いてその音楽は期待を裏切らなかった。かっちりとしたケレン味のない曲構成、メロディーが美しく、ボーカルの引き立つ編成。沁みわたるような美しさがある。

世に愛や人の素晴らしさを謳う歌は数あるが、考え抜かれた洗練と、深みと、説得力をもって心に迫る音楽はそうなく、それを実現し続けているアーティストもそういない。India.Arieは、いつもそれをやり遂げていて、貴重で素晴らしい。世の分断や、讒言や、差別が席巻するこの2019年にあって、ありがたいとさえ思える音楽だ。最近、新譜を聴くにがっかりしがちで、ついこのサイトの更新も怠りがちになっていたが、記す価値のある(wothy!)アルバムに出会えてよかった。(2019/2/24 記)

SongVersation (2013)


(★★★★★ 星5つ)

India.Arieの名は昔から気になっていたのに、アルバムをきちんと聴くのは初めて。簡潔に言うと、心地良い音なのに深い。名前のルーツを感じさせるとおり、インドの香りを少し取り入れながらもほとんどの音はアコースティックで洗練されていて、敢えてジャンル分けするならオーガニックソウルか。

題名は無論造語。歌を通じての対話であり、感謝の感情。人生の苦難に遭った時のことなどが素直に語られていて、しかし、一部のオーガニックソウルと分類される人の作品に見られるような、声の恣意的なキャラクターづけなどはされていない。そのせいか、内容に説教臭さを感じることはなく、誠実な印象をうける。ほっとひと息つきたい時、あるいは少し人生に疲れてしまった時などに聴くと癒やされる。(2013/10/2 記)