音楽レビュー Billy Porter


Billy Porter Presents: The Soul Of Richard Rodgers (2017)


(★★★★☆ 星4つ)




今年2019年のアカデミー賞でタキシードドレスを着用して臨み、話題をさらったBilly Porter。ミュージカル版”Kinky Boots”でドラァグクイーンのローラ役を努め、トニー賞受賞歴もある彼の作品を後れ馳せ聴いた。俺はミュージカルへの興味が薄く、Billy Porterについてはノーチェックで、実はこのアルバムも、デュエットで参加しているLedisiのディスコグラフィーを調べていて知った次第。

これは基本的にコンセプトアルバムで、『王様と私』や『サウンド・オブ・ミュージック』で有名なRichard Rodgersの世界を解釈したものだが、サウンドスタイルは現代的。といってもスカスカではなく、アダルトコンテンポラリー寄りのスタイルで安心。

Billy Porterの歌い方はソウルフル。ミュージカルシンガーというよりは、普通のramp;b/ソウルシンガーのようだ。アレンジは古典にこだわらず、自由にかつ現代的にアレンジされていて、聴いていて歴史のお勉強のようにならないのはとてもいい。歌いっぷりに文句はなし。ただ、男性シンガーがデュエットをこなすとどうしても女性シンガーの支え役になりがちで、女性シンガーと渡り合っている感じはもう少し押し出してもよかった気がする。主題が伝統的Richard Rodgersの作品で、ある程度保守的になるのは性なのかもしれないが、Billy Porterはせっかくゲイを公言し、タキシードドレスで沸かせたような人なのだから、もっと自由であっていいのでは。

しかしそのデュエットが目当てでこれを聴くきっかけになったので、個人的には聴いて心地よい。先述のLedisiの他にもDeborah CoxIndia.Arieなどが参加アーティストとして名を連ねていて、非常に豪華なアルバム。そうしたアーティスト達が集まることでも、Billy Porterの資質が知れる。良質で、聴いて満足感のあるアルバム。(2019/3/13 記)