音楽レビュー Eddie LeVert


Did I Make You Go Ooh (2016)


(★★★★☆ 星4つ)




Eddie LeVertがまだアルバムをリリースしてくれるのが嬉しい。多少声は枯れ気味かとも感じられるところがあるが、充分にパワフル。年寄りにありがちな、五線譜に書けてしまうようなビブラートもなく、よくコントロールされている。下記のアルバムでは音質が疑問だったが、これはインディーズレーベルからのリリースであっても、音質も文句ない。

インディーズからのリリース故に、流行りの「コラボ」(あまり好きな言葉ではない)もなく、豪華なアーティストをフィーチャーしての客寄せパンダ商法ではなく、一人堂々と勝負している。これはかえって好ましい。Eddieの濃密な世界を堪能できる。

正直、聴くにつけて今ももしGeraldが生きていたらどんな音楽を届けてくれていただろうかと、その似た声質に幻影を見るのだが、ここはEddieに向き直って聴くとしよう。正統派のソウルが堪能できる良盤。(2016/12/21 記)

I Still Have It (2012)


(★★★☆☆ 星3つ)

GeraldとSean、息子2人の相次ぐ死を超えて69歳になる父Eddieのソロデビュー(!)アルバム。GeraldとSeanが中心のグループLeVertの音楽を初めて聴いたのは”Big Throwdown”、1987年のリリース。当時自分はブラックミュージックの聴き始めで、それを聴いてああソウルフルとはそういうことかと思った覚えがある。そして元祖スーパーグループともいうべきLSGのアルバムもよく聴いた。それから縁遠くなり、死のニュースを知ったのもだいぶ遅れてから。

さて、Eddieのこれだが、オリジナルレーベルからのリリース。限りなくお手製に近い感じで、まず1曲目からサウンドクオリティーの面で「?」と思う。デモ版かと思うような音。続く曲は、そのクオリティーに慣れると曲自体メロディアスでまずまずな感じ。そしてEddieの声はLeVert一家のオリジンだったのだなあとしみじみ思う。69歳であることを考えると驚異的だ。”I Still Have It”と題されたのも分かる。

が、哀しいかな、何かどこか、繰り返し聴く気にさせない。その手作りサウンドのこともあるだろうが、「惹き」がないのだ。そういうのを考えると、音楽、ことにこうしたジャンルのグルーヴとは良い物を生み出すのが難しいものだと思う。そして、Geraldの声が懐かしまれる。(2012年6月6日 記)