音楽レビュー Carol Riddick


Love Phases (2015)


(★★★★★ 星5つ)




シルキーで、深く、濃いブラック。というとチープな缶コーヒーのCMのようだが、Carol Riddickは全くチープではない。正統派ブラックミュージックの引き継ぎ手現るといった感じだ。クワイエットストーム好きなら絶対に外せない。Anita BakerWill Downingあたりが好きなら即座に気に入るだろう。Will Downingとは実際に関係があるようで、ライブの共演もあれば、このアルバムの”The Way You Say My Name”にはネームクレジットが見当たらないがWill Downingとの共演が楽しめる。

Carol Riddickは適度に粘っこい歌いとフェイクの節回しのうまさが際立っているが、夜のイメージだけではなく、涼やかな声で爽やかなミッドテンポの曲も華麗にこなす。サウンドの組み立てはアコースティックで聞き飽きないので、フリーソウルやオーガニックソウルといった趣もあるが、いわゆるオーガニックソウルと言われる人達の一部で聞かれる恣意的な声のキャラクター作りをしている訳ではなく、まっとうな歌い方をしているところにとても好感が持てる。ボイスレンジも広く、”Once You Let Go”ではスキャットのインプロヴィゼーションと共に才能を存分に発揮した歌声が堪能できる。

ともかく、この人の音楽は一聴をお勧めする。久しぶりに大人が聴くに値するR&B/ソウルに出会った。(2015/5/18 記)