映画レビュー ベルリン・天使の詩 (Wings Of Desire)



(★★★★★ 星5つ)



この作品はヴィム・ベンダースの監督による作品だが、ベンダースの『都市とモードのビデオノート』を観て興味を持ち、そののちに、2年前に発表されていたこの作品を観た。一般的にはこの作品の方が『都市とモードのビデオノート』よりも遥かにポピュラーなようだ。

主人公は天使なのだが、一般的な天使のイメージではなく、暗い色のコートを着た中年の男というのが、物語をファンタジックなものでなく、より人間界の描き方にリアリティーを加えている。大半はモノクロームで描かれていて、ドイツの硬質なイメージを増幅させる。天使は人の考えていることを聞くことができ、そっと額を寄せると、重苦しい考えにさいなまれていた人がふと明るい方向に思考転換するなど、天使は中年男ではあるが、ちゃんと天使なのがいい。

社会的に見ると、これが発表された時はベルリンは東西に別れていて、壁が崩壊する直前のこと。重々しい人の世にあって、人間らしい心を志向する動きが、観る者の心にいっそう深くしみ入り、感慨深い。