映画レビュー 戦場でワルツを (Waltz With Bashir)


(★★★★★ 星5つ)



イスラエル軍に従事してレバノンに侵攻した兵士が、戦中の記憶をなくし、しかし繰り返し同じ夢を見ることから、失われた記憶を取り戻すため、インタビューを重ねる。
実写にしにくいイマジネーションの世界や、ともすると(テーマは重要であるのに)観る者を退屈させるインタビューの模様が、アニメーションで描かれることによって、うまく観る者を引きつけるように作られている。このアニメーションの技法を選択したのは、正解であると思う。

兵士の実情を描けば描くほど、戦争というものの理不尽が顕になるのは観る前から想像に難くないことだが、ここで描き出される実情と理不尽は、一般の人が戦争の悪イメージとしてまず第一に想像する「罪の無い人が殺されて」という側面ではない。「こんなことで前線は動いているのか」とか、「こんな馬鹿げたことが」とか、「こんな瞬間にも生死がかかっているなんて」という、戦争の薄情を観てとるのである。

しかし、当然ラストは重い。重くなければ、人が記憶を簡単になくすはずなどないのだ。何をなくしたのか、それは半ば想像がつくが、それを映像で見せられたとき、事実の重さに愕然となり、そしてあらためて今度は、戦争の馬鹿馬鹿しさ、残酷さ、無意味さ、禍根の大きさを、観客は思い知ることになるのだ。

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