(★★★☆☆ 星3つ)
まず、この邦題がいただけない。『ザ・ライト』は、原題を見るとThe Rite(儀式)なのだが、カタカナでこう書いてしまって日本人の誰がその英単語を思い浮かべようか? 結果それを補うために文字通り補題がつけられているのだが、なんとも不細工な有様だ。それだったらいっそ別の名前をつけてしまえばよかったのに。
気を取り直して中身だが、葬儀屋の息子が神学校に進み、自らの信仰心を疑問に思うなかでエクソシスト(悪魔払い師)養成学校に行き、なお疑念を持つなかエクソシスト養成学校の教師に勧められてアンソニー・ホプキンス演じる異端のエクソシストを訪れると…、というストーリー。エクソシストというだけで、「ああ、キリスト教徒でないと原体験的に植えつけられた悪魔や地獄への畏れの概念がないから、怖くないんだろうな」と覚悟はしていたが、やはり、そうした根っこにあるものがないと、湧き出る恐怖感というものは感じられない。第一、悪魔が憑依した人の症状(というのか?)も、そんなに怖くない。
じゃあこの映画のどこを観るのかというと、やはりとにもかくにもアンソニー・ホプキンスの怪演に尽きる。ストーリーだけにCGが加えられているところはたくさんあるが、それでも演技力+『羊たちの沈黙』シリーズのレクター博士で確固たるものにしたおどろおどろしい迫力でもって、この映画は牽引されていく。
そもそも、この映画で主人公に据えられている男は、演技も風貌も冴えないつまらない男で、はっきり言って添えもの。ポスターがアンソニー・ホプキンスになっているところからして、この映画に期待するところはアンソニー・ホプキンス以外ないと言ってよい。
結果、もう新しくホラー映画を作るのは、アイディアが出尽くした感があって、既存のいろんな映画のイメージを拝借しながらやっていくしかないのかな、と、ホラー映画好きとしては少し悲しく思った。