飲食店レビュー Valinor(フランス料理 杉並区荻窪)

(★★★★★ 星5つ)

Valinor(ヴァリノール)は、フランス料理店。「フレンチ技法を使い、日本の魚たちを中心に今までにない様な魚料理を」というのがテーマとか。比較的こぢんまりした居心地のよい店で、銀座レカンの副料理長の経歴もあるシェフが、季節感のある料理を創る。

今回は自分の誕生日祝いで、パートナーが予約して昼に来訪。コースは決めてあったので、着席するとコースの案内はメニューではなく、グラスにあしらったグリーンとともに素材の名前の書かれた紙が入って飾られていた。

我々はフランス料理を食べに行くとコースを通じてシャンパンを飲む場合が多い。この店のワインリストにはシャンパンも充実していて嬉しい。自分の誕生祝いではあるが、パートナーの希望であまり強すぎない味のものを、ということで、今回はリストの中からDelamotte Brutを選択。面白い値付けで、もう少し高いとすぐにプレステージ・シャンパーニュが各種ラインナップしていた。

日本の魚がテーマということで、コースには鰆や黒ムツなどの名前が並ぶ。一品ごとの詳細は下記写真キャプションを参照してもらうとして、総じて言えるのは、繊細な食材が手に入る日本でフランス料理を味わうことのメリットを感じられるのが良い、ということ。素材も関西以西の、東京では手に入りにくい食材が使われていて興味深く、和食のような技法で調理されていながら、モダンフレンチとしてまとまっている。

近年、モダンフレンチは皿の演出からもてなし方まで、定着してきた傾向が見られるが、Valinorでは概ねそれに則っていたように見える。すなわち、少しミニマリズムを感じさせながらも禁欲的でないシンプルな皿に少しオフセットされて盛りつけられる料理の数々や、食材ごとに凝った調理を施してそれを組み合わせる皿や、コミュニケーションを取りながらも出すぎない接客、お茶菓子後にちょっとしたドライケーキをお土産として包んで出すなど。

サービスはこなれている。ソムリエはシャンパーニュの温度を適切に管理してくれ、言わずとも一杯目はよく冷えたものを供し、2杯目以降は少し温度を上げてからクーラーに挿すなど、ストレスがない。

荻窪というと庶民的な街で、そこに根ざしてフレンチをやっていくのは苦労も多いだろうが、こうした店は続いていってほしいものだという期待も込めて星5つ。(2015/11/19 記)

※2017/8/16再訪。シェフが交代したとのことだが、日本の食材、特に名産地の魚を活かした料理は変わらずおいしい。デザートや茶菓子にも手抜かりなし。店のコンセプトを見事に承継しつつ、新しい価値を生み出している。

初回時のメニュー↓

再訪時のメニュー↓

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