(★★★★★ 星5つ)
観よう観ようと思いながら観逃しており、ようやく鑑賞。描かれている本質はマイノリティー同士の連帯によるサッチャー政権下での闘争なので、重たいはずなのだが、映画の印象は陰鬱ではない。むしろ痛快さがあり、その逆。ユーモアも散りばめられている。この映画だけ観ると、そんなむこうみずな行動からハッピーエンドなどあり得るのか?と思うかもしれないが、これが実話を基にしているだけに、ストーリーに入り込みやすく、しかも消化しやすい。
80年代半ばに活動した人はこんなにもエネルギッシュだったのだろうか。情報が得られやすく、人を募るにも動かすにもネットなどのツールを使いやすい今の時代にあって、自分は一体これの何分の一の行動ができるだろうかと、自身の生ぬるさを恥じ入りながら観た。
少数派同士の連帯による運動、というと、それこそ時代がかっていて、考え方としても手法としても古さを感じる。が、それが実際にうまく行ったモデルケースの一つとして、公権力や世の中の大勢を動かそうとする時に何をすべきなのか、この映画には示唆的な面が多く含まれており、単に時代のひとつの記録にはとどまらない説得力がある。
物語はLGBT(という言い方も当時はなく、ゲイ&レズビアンという言い方)グループが炭鉱夫を支援する様が描かれている。英語ではLesbians and Gays Support The Minersと記されるが、miners(炭鉱夫)とminors(少数者・弱者)が同じ発音で、これを音声で聞けば少数派援護のダブルミーニングであることもひとつのキーになる。Solidarity(連帯)がキーワードとして出てくるなか、当然その少数派・弱者の連帯が、より意識的に訴えられている訳だ。
したがって、これは単なるLGBT映画ではない。LGBT映画でありつつ、社会に向けてより広く訴えかけるものだ。ヒューマニティーの点で普遍性がある。描き方も丁寧で、観ればすべての人に得るものがあるだろう。
映画中には、AIDSが発見されてまだ数年、人々が偏見の中病に倒れ、AIDS=死であったことも出てくる。AIDSはゲイの病気であり、病気を蔓延させるのはゲイだという逆風があり、それをも押して権利獲得へと向かう姿勢の積極性も、逃してはならない点だ。エンディングは、予想していてもぐっとくる。イギリス映画なのだが、こうした意義深い映画が企画され、資金が投入されて制作され、評価される環境を羨ましく思う。(2017/7/22 記)