(★★★★★ 星5つ)
Amourは西麻布の少し奥まった場所にあるフレンチレストラン。若いが名店で修行を積んだシェフ後藤祐輔氏が日本らしさを大事にしつつも本格的なフランス料理を創る。
Amourは2014年のミシュラン1つ星とか。これまたミシュラン1つ星の「ひらまつ」から通りを一本入った所にある。住所的には西麻布だが、最寄り駅は広尾なので広尾と言った方がいいかもしれない。地価の高い場所で1棟建ての優雅な建物は、元はオフィスだったのだとか。前庭を擁し、ウェイティングラウンジは半地下の1階、メインダイニングは階段を上がって2階。今回は俺の誕生日でパートナーと訪れた。6時開店で6時に予約を入れたので、我々が一番乗り。ウェイティングラウンジに案内されてから2階へ上がった。
少し緊張気味の女性レセプショニストは一生懸命勉強中なのだろう。1979年生まれの若いシェフが率いる店で、スタッフも若い。ミシュラン1つ星の店としては失敗も許されず、また料理にうるさい客も多く訪れるので大変なのだろう。温かみのあるおもてなしというよりは、出すぎず礼儀正しい感じの接客。
コースを通じてシャンパンにしたので、アペリティフを省いていきなりボトルで注文したのだが、ワインリストを選ぶ中メニューと合わせて選んだ方がよかろうとメニューを同時に持ってきてくれたり、コース途中でシャンパンの温度を上げたいのでクーラーから出すように依頼すると、同時に膨らみを大事にするためにグラスも違うものに取り替えてくれるなどの気遣いはそつがない。
それぞれの料理は下記写真のキャプション参照。今回コースは秋のメニューとジビエを堪能する『ジビエとオマールのコース』があって、我々は後者にした。メインのジビエは単品の青首鴨を選択。とてもフランス料理らしいフランス料理なのだが、添えられた野菜のあしらいや、金箔を散らしたコンソメのしつらえなど、そこここに日本を感じて、そのバランスが面白い。そして素材の取り合わせや分量にも細かい配慮が見え、料理に真面目に取り組んでいるところがとても好感が持てる。
スタッフが緊張気味だったのがもっとリラックスしてくれると、より洗練味が増すのではと思われるところもなくはなかったが、生真面目なのもまた日本らしい良さ。実力がありつつこれからのポテンシャルも感じるいい店だった。(2014/11/10 記)
店舗外観。明るいし面積も大きいが、通りを入ったところにあるので、表の大通りからは派手には見えない。
アミューズ。栗のパイ包み。紙に包まれて、栗を敷き詰めた皿で供され、それを客がピックする。街角で売られている様をイメージしたとか。味は洗練されている。
コースを通じてシャンパンで。Pierre Moncuit Grand Cru Blanc de Blancs Brut Non Dosé Millésimé 2005
ジビエはその日に入った数種類から選ぶ。この日は新潟産の青首鴨を選んだ。「こちらです」と見せにこられた。俺はこういうのが大好きで興味深かったが、日本人には抵抗ある人もいるかもしれない。我々はジビエ好きで、大変興味深かった。
ジビエ肉の自家製パテ。猪肉、豚の血などを固めたパテで、とてもしっかり詰まったパテ。紅玉にプラムのチャツネ、マダガスカル産の胡椒などが添えられている。
ジビエのコンソメ。濃い色だが澄み切っていて、仕事の丁寧さを感じる。香味野菜が入って暖められた皿の蓋を取り、野菜の香りを感じてからコンソメを注ぐ。添えられたカナッペには削ったトリュフが乗せられている。和を感じる一皿で、トリュフももちろん香り高いのだが、ビジュアル的にはかつおぶしのようなイメージ。
ジビエ→ジビエと来たところで、オマールの登場。オマール海老をお好みのソースでということで、今回はエスカルゴのブルゴーニュ風のソース。オマール海老は生の食感を活かすべく軽く火が入れられていて、弾力がありながらとても滑らか。
口直しのゼリー。赤い玉はグリオットチェリー風味。ぐい呑みで。味は極控えめでナチュラル。
鴨。胸肉、ささみ、腿を5種のそれぞれ違う火入れ法を使って調理。肉質が繊細で、野趣はあるが臭みはない。添えられた野菜にえのきがあるなど、やはりここでも和を感じるが、鴨自体はとても正統なフランス料理。
オマール海老のリゾット。〆のご飯のようなイメージとか。味は濃厚だが、量は適切。
アヴァンデゼールはタルトタタンの再構築。キャラメルとりんごのアイスクリームにシナモンのクランチが添えられている。左の赤い粉なりんごの皮を冷凍乾燥させたもの。すべて合わせるとタルトタタンの味に。
誕生日に行ったのでケーキを用意してもらった。
ケーキは1ピースだけカットしてもらってあとは持ち帰りに。
グランデゼールはチョコレートの下にライムの寒天ジュレなどを忍ばせたキャラメルアイスクリーム。温かい洋梨のソースをかけてチョコレートが一部溶けたところで食べる。温度や食感が違う物を様々に味わう一皿。この後はコーヒーか紅茶。茶菓子も手抜かりなしだった。