ブックレビュー『自分の仕事をつくる』

西村佳哲(著)


(★★★★★ 星5つ)

人から勧められてこの本を読んでみて、非常に良かった。自分のライフワークを何に定めて、いかにしてそれで飯を食っていくかは、人生の大きな部分を占めるテーマだが、システムが定型化した社会では、自分なりのやり方を発見するのも難しければ、発見できてもそれを正しいと信じて実践するのもまた難しい。特に会社勤めという形態が一般化している日本ではそうだ。

本書はそんななか、「自分はその仕事を通じて何がしたいのか」とか、「その仕事が好きならそれをつきつめればよい」という本質論に立ち返って自分の仕事を自分のやり方で実践している人や、それを独自の方法として構築している会社を訪ね、紹介している。難しいことを概念だけで論じると、机上の空論と一蹴されもするだろうが、この本は実例をたどることで働くことの自分にとっての意義をつぶさに描き出しているので、とても説得力がある。それがこの本の特によいところだ。実例だから、読んでいて自分にもできる気になってくる。ただしそれは、自分が今のままではいけないという社会的な生きづらさを特に仕事の面で感じていて、しかも自分のことを自分で推進していこうと思っている人に限っての場合だが。

さて、そんなワークスタイルを構築することについては、本のタイトルが『自分の仕事をつくる』であることからも明らかなように、本書の主題の1つであるのだが、もう1つ重要なテーマとして、物や仕事を生み出す時にそれが真摯な姿勢でなされているかどうかが重要、ということがある。これは本書の初めの方に書かれてあって、「まあこんなもんでしょう」というタカをくくった態度は人間不在を生み出すもとであり、受け手への敬意もなければ物への愛着もなく、不毛である旨が説かれていて、これはまさに自分が日頃から考えていることと合致するところであったそういった仕事、殊に物づくりに必要な真摯さについてまず書かれてあることは、この本を読み進めていくうえで大きな推進力となった。

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