ブックレビュー 貴志祐介

天使の囀り


(★★★★☆ 星4つ)

『クリムゾンの迷宮』が、常に予想の範囲内に収まり続ける展開なのに対し、『天使の囀り』は期待している裏切り=意外性をくれるので、ホラーに馴れた人が読んでも楽しめるだろう。先を読み進めたいと思わせる展開がよい。

本書が出た頃は映画のCG技術も今ほどではなく高価だったが、今なら映画化できるような気がする。映画化したら観たいと思わせるような、ビジュアル(本を読む限りは読者の想像力)に訴えるシーンが多く、それも魅力。また、小説としても『クリムゾンの迷宮』が平明すぎる言葉遣いで退屈だったのに対し、意図的にだろう語彙が増やされていて、小説を書くために「お勉強」した元を取らんとするがごとくの講義説明文は少し過剰でそこが読み飽きるアイテムは見えるものの、読み物を読んでいるという充実感もある。

つまり、この小説は快感の誘導が巧いのだ。これは、読了すれば意味が分かるだろう。

クリムゾンの迷宮


(★★★★★ 星5つ)

小説とはいえホラーなだけに文章表現の面白さを期待するよりも目を引くのはストーリー展開だろう。意識不明から異様な光景下で目覚めた主人公が目にする 「ゲームは開始された」で始まる、というとどこか映画のSAWを思い起こさせるが、1999年出版のこちらの方が先だから、ひょっとしたらSAWはここからヒントを得たか。登場人物同士が特殊環境でいがみ合い猜疑心を持ちあまつさえ(自主規制)という運びも似ている。そしてモニタリングの手法も。

結末というか物語の下敷きになる内幕は「テレビゲーム級」か。そのせいか、SAWのように展開に唖然とすることはなく、読みながら想像する範疇に楽に納まる。怪しい人物が誰なのかは、この手のストーリーに慣れた人なら最初の1割も読めば分かるが、それはわざと筆者の意図したところ? 怖さについてはホラー文庫という割にはあまり感じず、人間の禁忌概念に楯突く描写をもっと迫ってもよかった。

ストーリーにダレる所はなく、展開をどんどん追っていけるし、展開の仕方はオーソドックス、語彙も平明すぎるほどに平明なので、途中で中断しても、それこそゲームを途中から続けるように簡単にまた続けることができる本。通勤通学のお伴に。(笑)

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