ブックレビュー 伊坂幸太郎

(★★★★★ 星5つ)
(★★★★★ 星5つ)

死神の精度


(★★★★☆ 星4つ)

前に読んだ↓の『重力ピエロ』が肩すかしだったが、『オーデュボンの祈り』は面白かったので、伊坂幸太郎という人を捨てきるには忍びなく、読んでみた。さて、雑誌の連載を1冊にまとめたもので、ショートショートのような感じになっているのだが、それぞれに独自の設定がしてあって、アイディア豊富なのだなと思う。ちょっと設定は俗すぎるところがあって、読み流した作品もあったが、全般には面白く、通勤電車のいい時間つぶしになった。

そのあたり、巻末に収録されている解説が、「純文学を読むのに忙しいので、こういう人のは…」みたいなことを書いていて、イヤラシイなと思いながらも、半分はやはりそうなんだろうなと思う。つまり、伊坂というのは、作家であることは間違いないのだが、素材を提供するエンターテイナーなのだ。人を楽しませること=つまり読んで楽しいことに主眼が置かれていて、そこに自分のカラーと力量というエッセンスを加味して、伊坂風味に仕立てる。自分自身も高級でないことを分かりきっていて書いているのだろう。それでもどこか、俗に墜ち切らないというか、品位を保っている。

ところで、本の表紙があからさまに具体的なビジュアルだなと思っていたら、やはり映画化もされているようだ。これだけ明確なストーリー集なら、映画化されても不思議ではない。むしろ最初からそれを想定して書かれているのではないかとさえ思える。

重力ピエロ


(★★☆☆☆ 星2つ)

とあるレビューをネットて見て読む気になって、読んでみたのだが、俺的にはあまり響くものがなかった。
トリックが、3分の1ほど読んだ時点で「こうじゃないかな」と思ったとおりで展開されてしまって、予兆を裏切ってくれる楽しさがなかったからかもしれない。本の背表紙には「謎解きに乗り出した兄がついに直面する圧倒的な真実とは………。」などと期待を煽る文章が書かれているが、読んでみると実際はさもありなんといった展開で、そこにも驚きがなかった。世界や舞台が狭いのなら、その叙述は深くなければならない。それが本を面白くさせる必須要素だが、叙述が思いのほか浅かった。残念。↓の『オーデュボンの祈り』の方が、圧倒的によい。

オーデュボンの祈り


(★★★★★ 星5つ)

物語の舞台性が巧く作り出されている。100年来「鎖国」を続けているという島に、仙台から主人公が連れてこられると、ぼんやりとのどかな、しかしどこかおかしな島民達が次々現れ、シュールな世界が展開してゆく。登場人物の名前が苗字で次々出てくるので、「この人は誰だったっけな」と思うかもしれないので、しっかり筋を追っていく必要があるが、推理小説として与えられていくピースは最後に気持ちよくはめ込まれるので、筋を追うだけの価値はある。舞台はシュールで特殊だが、主人公は離れた仙台でのきわめて現実的な記憶に思いを馳せるので、現代小説を読んでいる趣もある。

文章としても、はっとした比喩や新鮮な言葉使いがあり、俗なミステリーのようにただただストーリーを追っていくだけではなく、文章自体も楽しめるので、小説として楽しい。著者は法学部出身だが、リョコウバトの話しを出してきたり、カオス理論を出してきたり、そのくせメジャーフィールドであったはずの法的構成や法治国家概念はすっぱり捨て去っていて、その潔さも心地よい。

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