飲食店レビュー Essence(フランス料理 東京都三鷹市下連雀)


(★★★☆☆ 星3つ)

Essence(エサンス)は、フランス料理店。名前のとおり、素材の本質を見極め、四季のエッセンスを引き出すのがテーマとか。郊外の住宅街に佇む重厚な外観の店。今回はランチでパートナーと訪れた。店の前には「本日は予約で満席」との旨表示があり、予約は必須。

レストランは建物の2階。ドアを開けると左右に部屋が分かれており、メインスペースの窓際の席に案内された。落ち着いた、どちらかと言うとクラシックな雰囲気の室内だが、明るい雰囲気で、テーブルクロスはテーブルランナーのように敷かれており、郊外の店らしいリラックスした空気を感じる。

昼間のコースは2種類。我々は前菜2種、魚と肉がつき、デザート2品のコースを選択。

例によってシャンパーニュをボトルで頼むべく、楽しみにしてワインリストを見るに、シャンパーニュは1種類のみ(とスパークリングワイン1種)。店のウェブサイトによるとBYOが可能とかで、抜栓料も2500円と安いので持ち込もうかとも考えたのだが、初めて訪れる店でそれは失礼かとも思い、店の物を楽しもうというパートナーの提言もあったところ、そこは残念。唯一の選択肢であるPannier Brut Traditionをオーダー。抜栓はバックヤードで行い(「ポーン」と音がした)、試飲はなしで、ソムリエではない若い女性の店員が注ぐ。

先に言っておくと、総評としては料理は安定していてクオリティーが高い。それだけに残念という意味での上記の状況を記した次第で、えらい勢いでコルクを抜いたとか(他のテーブルでスパークリングワインがオーダーされた時にも同様だった)、ホストのテストもなしにゲストのグラスから先に注いだがブショネだったらどうするのかとか、料理の上質さからするとそこまで気を遣うべきレベルのレストランであるのに、という意味だ。

さて、そんなことではあったが、素材にこだわって野菜は無農薬の物を、魚は函館や長崎から仕入れるなどしているとのことで、料理はどれも素材の味が活きており、妙にいじりすぎていないのに好感が持てた。低温調理が悪いとは思わないが、何時間も火入れを繰り返して泡にして、といった手法の物は、それが物の本来の味だろうか?と思われるものがある。
そんな中、やはり店名のとおりessenceを大事にしているのだろう、この店の料理では素材本来の持ち味が分かる。しかしもちろん、丸のまま放り出されてくる訳ではなく、ちゃんと洗練をまとって現れるので、素材のみならず料理を楽しみにして行って間違いはない。

そして、デザートにはアルコールが使われていたのが面白かった。トマトの日本酒コンポートには酒粕アイスがあしらわれたり、ベリーのシャンパーニュクープのムースは甘さが控えられていたりして、大人に焦点が置かれている。

そうした料理の良さ(価格も非常に良心的)を思うに、サービスやワインにもう少し神経を行き届かせてくれると全体の印象がより良くなるのではないか。昼だからなのかソムリエ不在がゆえの上記のシャンパーニュの状況は疑問だったし、クーラーに挿されてテーブルに供されたまま、注がれる気配がないので、二杯目からは自分で注いだ。
若い女性店員はホスピタリティを意識しているかどうか疑問で、シェフが「これをこう説明してくれ」と教えた暗記物をせっせと頭から繰り出しているのに精一杯な感じ。レストランでの食事に行き金を払うのは、腹を満たすことに対しての他に、空間に、時間に、サービスに、雰囲気に対してでもある。繰り返すが料理はおいしいので、総合で頑張ってもらえれば、印象はもっと良くなるだろう。因みに食べログではベストレストラン2014に選出されている。
(2016/6/1 記)