音楽レビュー Tyrese


Black Rose (2015)


(★★★★☆ 星4つ)




どちらかというと音楽業よりも俳優業の方で日本では注目を浴びているかもしれないTyrese。ワイルド・スピードやトランスフォーマーなどの出演で有名だが、この音楽アルバム”Black Rose”では正統派R&Bシンガーとしての顔を見せる。

コマーシャル対策としてもそつがない作りで、フィーチャーされたアーティストはChrisette Michele、Snoop Dogg、Jennifer Hudson、Brandy、そしてジャンル的にかぶるのではないかと思われるTankも。

音はシック。ミドル~スローナンバーを中心に、夜の似合うセクシーな音楽を届けてくれる。声質は平均的で、曲目を知らずに聴かされて誰が歌っているのかをあてるのは難しい感じだが、声をつぶし気味のシャウトにはこの人らしさを感じる。曲調と共に耳には心地よい。しっとり歌うラストナンバーのピアノバラード”I Still Do”は白眉。

スカスカの、というよりはカスカスの打ち込み音で辟易させられるトレンド系R&Bの音とは距離を取っているのがいい。といっても音数は少ないが、間合いの取り方や曲の作りが美しいので、痩せた感じにならず、洗練を演出するのに成功している。男性R&Bシンガーのアルバムを探しているなら、聴いて損はない。(2015/9/4 記)