音楽レビュー Donald Hayes


Front Ground (2016)


(★★★★☆ 星4つ)



これがDonald Hayesのデビューアルバムだが、ミュージシャン・アレンジャーとしての経験はとても豊かで、これまでの競演相手としては公式サイトのバイオにポップ・R&B界をはじめとするきらびやかなスター達の名前が嫌というほど挙がっている。Donald Hayesを聴いてみようと思ったのも、彼の名を知っていたわけではなく、Eric BenétやMarcus Millerの名を発見したのがきっかけ。豊富なフィーチャーリングアーティストの名前が他にも挙がっている。

聴くと、実にスムース。シルキーで都会的で、いかにもサックス奏者のソロアルバムといった風情。エモーショナルに音を割って表現してもよさそうなところでも、徹底してなめらかで、ちょっと上品すぎるかなという感じもする。

しかし、アレンジャーとしての経験も活きているのだろう、ゲストボーカルが入った曲でも、その上品すぎる危険をはらんだサックスは意外にも決して引き下がらない。サブに陥ることなく、しっかり主張しているのだ。
そしてTotoの”Georgy Porgy”カバーなど、選曲も上手い。一応ジャズに分類したが、ポップ・R&B界の人々と仕事をしてきた人だけに、その辺りを聴いている人にもアピールする力がある。

一回聴いただけでは「耳に心地よいが流れていってしまう類かな」と最初感じたが、複数回聴くにつけてじんわりと良さがにじみ出てくる良いアルバム。