音楽レビュー Jimmy Somerville

Homage (2015)


(★★★★☆ 星4つ)



存在意義のある重要なアーティストでありながら、今までページを割いていなかった。このアルバムは今年3月にリリースされていたのに今になって気づき、聴いてみた。

タイトルはずばりオマージュ。ディスコサウンドへのそれであり、全盛時代へのそれであるという意味だ。しかし、古くからカムアウトしてゲイの権利のために闘うアーティストであり、ゲイのポップアイコンである彼のこと、このタイトルはまた戦略的で、Hom…と綴れば性的指向を思い起こさせることを狙ってつけたのだろう。
ところで、ここでいうゲイの、とは、ゲイである、の意味。ゲイポップアイコンはゲイに支持されるアイコンとして数々女性アーティストが多いなか、ゲイであるポップアイコンという存在は貴重。ゲイなのに、あるいは周り中がその人はゲイだろうと思っていたとしてもそれを公にせずうやむやにしてきた人は多く、同じUKではPet Shop Boys、Erasure、QueenのFreddy Mercury、Wham!のGeorge Michaelなどが挙がるが、多くはにおわせるだけだったところ、Jimmy Somervilleは孤軍奮闘してきたと言ってもよい。そのJimmy Somervilleが闘うキャリアの中、この時代にまた1枚アルバムを出した意義は、音楽的なこと以外の点としても大きいといえる。

それはそうとこのアルバムにフォーカスすると、音はThe Communards時代を髣髴とさせるクラシックなディスコサウンド。今これを敢えて演るのは、ダンスミュージックではEDMがもてはやされる中、本物の音楽ってこういうもんだろう、本物のダンスってこういうもんだろう、という彼の繰り出すカウンターパンチとしてであると理解できる。さすがにドラムくらいは打ち込みかと思われたが、生の音がするし、ストリングスやホーンも生音らしく迫ってくる。

声は少し枯れたというか割れたというか、ザラザラしてきた。しかしJimmy Somervilleを聴く者誰もが期待するファルセットボイスは健在。そして、オマージュとはいってもカバーソングでごまかしたりはしない。オリジナルの曲を届けてくれるその根性もまたすごい。そして、ソングライティングの能力もまた評価されるべき一面。

俺自身もまたJimmy Somervilleのように考え、闘う人であって、お気楽に人生を楽しんできたタイプではなかった。なので、そうした推進する意志を感じるところは応援したい一方で、面倒な自分自身を鏡で見せられているようでもあって、複雑な思いもする。ディスコサウンドを聴きながら眉間に皺が寄りそうだ。(2015/12/2 記)

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