音楽レビュー Frankie Knuckles


Defected Presents House Masters – Frankie Knuckles (2015)


殿堂入り作品



昨年惜しくもこの世を去ったFrankie Knuckles。ハウスミュージックを確立し、世に広め、リミックスの概念をオリジナル楽曲のクリエーションにまで高め、また数々の名曲を生み出したその功績はあまりにも偉大だ。「ゴッドファーザー・オブ・ハウス」の呼び名は伊達ではない。その膨大な作品から一部ではあるが名曲を集めたコンピレーションが、ハウスの名門レーベルDefectedからHouse Mastersシリーズの1つとして出た。

まだハウスミュージックのスタイルに向けてアンダーグラウンドダンスミュージックが殻を破ろうと模索している時の音から、不動の名曲までどれもが懐かしい。90年代のアンダーグラウンドハウスを自力で開拓したクラバーならば誰もが知る名曲”The Whistle Song (Sound Factory 12″ Mix)”は涙が出るほど美しいし、Roberta Gilliamをフィーチャーした”Workout (1992 Vocal Mix)”のバンプ感、全てを圧倒するAnn Nesbyの熱唱が席巻するSounds Of Blackness “The Pressure (Frankie Knuckles Classic Mix)”の壮大さ、そして各曲で聴かれるFrankieならではのピアノリフの美しさ、どれもが偉大すぎる。

FKは、一言で言うなら、ハウスの美点なのだ。4つ打ちリズムの躍動感に、メロディックで流れるように美しい音を乗せて、アンダーグラウンドに「キラキラした」(クラブ用語では死語だが)光をきらめかせる人。あまりにもアッパッパーのハッピーでなく、本当の意味の幸福感や生の素晴らしさを音にして届けてくれていた。ライブでのDJプレイも何度か聴いたが、人柄が現れているような温かい音で、満場の喝采を受けていた。

2015年になり、もう初期の音から四半世紀余が過ぎた今、音の古い新しいはあるが、それでもダンスミュージックやクラブを愛する者なら聴いておくべき音。(2015/5/1 記)