映画レビュー ムカデ人間 (The Human Centipede)



(★★★★☆ 星4つ)

悪趣味発動。観よう観ようと思っていながら観られていなかったもので、ホラーの苦手なパートナーの出張中に自宅で鑑賞。人間改造もののホラー映画は、久しくなかったが、これは着想が新しい。舞台設定がドイツというあたりもなかなかにツボ。マッドサイエンティスト的博士役も、よくぞこうしたルックスの人を選び出してきたものかと思う。

人間の口と肛門を縫合して繋げてしまうことに誰もが抱く嫌悪感が物語をドライブさせるのだが、そのムカデ人間の繋げ方が、先頭から日本人男←アメリカ人女1←アメリカ人女2、となっていて、女2人はホラー映画の恐怖体験者によくありがちな白人女性。一言も作中には触れられていないが、その繋ぎ方もミソで、きっと「白人女がアジア人男の尻に繋げられるなんて!」という人種差別的概念が一層の嫌悪感を誘うようになっているに違いない。日本人男の訳者の人選はたまたまの成り行きだったようだが。(注:そういう差別的感情を使っているのかもしれないということは推量であって、映画製作者はそれを意図していないかもしれないし、この映画を高く評価したからといってその感情をナチュラルなこととして容認するものでは決してない)

さて、そのどろどろ加減はなかなかのもので、それもさることながら、ストーリー展開がいい。結末近く、「え~?!」という展開が出てくる。そしてバッドエンド。最近のホラーは、作品自体が不作なうえに、モンスターや邪悪が退治されて朝を迎えて一件落着、といった安易な終わり方が定石となっているので、そのあたりの急展開が良かった。

生理的嫌悪感を誘う作り、オリジナリティー、ストーリー運びと、グチョグチョ的ホラー映画としては星5つなのだが、いかんせん万人に勧められるものではないので、敢えての星4つ。(2012/7/3 記)