ブックレビュー『書きあぐねている人のための小説入門』

保坂和志(著)


(★★★★☆ 星4つ)

とっちらかっている。思考も、文章も。この本は書かれたものではなく、編集者を前に10時間ほどしゃべったテープがもとになっているらしい。が、さすがにです・ます調とだ・である調くらいは統一してほしい。そこも考えあってのこと、わざと残したとか筆者は言うかもしれないが、小説ではないのだから、自分の考えを著して人に読んでもらうという時には、読者に対する敬意というものが必要。そして文章を書く者がその敬意を表す方法は、読んでもらう文章をちゃんと整えること。それができていないというのは、文章家としていかがなものか。それともこれは、編集者の責任か。

あと、考えがあっち行きこっち行きして矛盾しているのは、これがテレビやラジオの生放送なら仕方がないが、文章化されて手を入れる時間があるのだから、ちょっと整理したらどうだったのか。そこにも筆者の不遜を感じる。自分の作品を引き合いに出すのも、自分のことを考えているうちに自分の作品の内容を他人は知っているかのごとく思い込んでしまったかのような、いわばひとり内輪受けの状態で、どうかと思う。小説家を含むアーティストは、作品のみで勝負すべき。作品の批判をうけて、これはこうこうこういうつもりでした、ということをわざわざ出版物で言うのは、言い訳にしか見えない。

とまあ散々なところがある本なのだが、それでも小説を書くことについて一生懸命考えて、他によい小説家が育ってほしいという姿勢から懇切丁寧に(混乱してはいるが)自分の思うところを伝えようとしていている点には好感。そしてひょっとしたら、「こんな程度の考えと文章しか書けない奴が小説家をやっていてこんな本まで出せるなら、俺にも書けるかもしれない」と、小説家志望の読者に思わせることが、この本の一番の美点・利点かもしれない。(笑)

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