ブックレビュー『ガンジー自伝』


マハトマ・ガンジー(著)


(★★★★★ 星5つ)

ガンジーは、意志の人である。しかも鉄の意志の人である。そういう人となりであろうことはもちろん読む前から分かっているつもりだったが、本人の言葉で行動をつぶさに記されると、ここまでであったかと思わされるほどだ。そうでなければ戦争でなくインドを独立に導けるはずはなかっただろうが、信を曲げないその様は、時に「そこまでしなくても」と少し同意しかねるエピソードさえある。

それはそうと、ガンジーが南アフリカでの人権確保に大きく貢献していたとは、恥ずかしながらこの本を読むまで知らなかった。しかも、偉人となると、自らは泥仕事をせず上から指導してと思われがちなところ、過酷な目に遭いながらであったことが知れて、あらためてすごさを知る。

非暴力・不服従は誰もが知るガンジーのスローガンだが、この本を読んで特に印象的だったのは、次第に役所や役人を味方につけて、その運動の輪を拡げていったその手腕と、非暴力・不服従とが共鳴していった様だ。運動を成功に導くにはガンジーのカリスマ性も働いたには違いがないが、善を押し進める時のストラテジックな手腕、そしてそれを支える信念が人を、社会を動かしていった様は、読むと希望を与えてくれる。

また、ただただ偉人であっただけではなく、人間臭いエピソードも真実のままに書かれていたのは、非常に興味をそそった。決して偉人は遠い存在でなく、自分もまた信を貫くことでそれに近づけるのではと思わせてくれるのである。(2012/12/24 記)