シャンパーニュレビュー Agrapart & Fils Les 7 Crus


郊外のチーズ専門店に行ってきた。いつも伊勢丹新宿店の中に入っている店で、いいチーズが手に入る所があって、その本店が立川にあるというので出かけてきた。

店にはお茶が飲めるスペースもあって、少々の渋滞を経て車で着いたのもあって、まずはベイクドチーズケーキを食べつつお茶をした。それはそれでおいしかったのだが、大きなチーズがどーんと揃えられた商品ケースに二人とも気もそぞろ。(笑)チーズケーキとお茶はパパっと食べてしまって、さっそく物色。知識が豊富で、とても感じのいい接客をしてくれる店員さんがいて、ケースにあるものだけでなく、熟成庫からわざわざ持ってきて勧めてくれたりして、とても親切。これこれこんなワイン(シャンパーニュ)と合わせたいんだけど、と言って相談し、試食をした後、買ってきた。

買ってきたのは、モテアラフィユというシェーブルながら柔らかくクリーミーなタイプのチーズ、ゴルゴンゾーラ・マスカルポーネ(ゴルゴンゾーラとマスカルポーネが交互にサンドされたもの)、コンテ(何ヶ月熟成のものだったか失念)、シュロップシャー・ブルーというスティルトンにアナトーで着色したチーズ。

ついでに枝付き干しぶどうも。
ついでに枝付き干しぶどうも。

この日、出かけたついでに夕方小詰めして(丸亀製麺初体験!)夜になってもお腹が空かなかったので、このチーズを試しつつ、他に適当に食材を出してシャンパーニュを飲んで夕食にしてしまおう、ということになった。

平たく並べているので多く見えるけど、実際総量は大したことない。
平たく並べているので多く見えるけど、実際総量は大したことない。

ついでなのでそれぞれのプレートはこんな感じ。

白ワイン漬けの干しぶどうやナッツなどを練り込んだライ麦パン。
白ワイン漬けの干しぶどうやナッツなどを練り込んだライ麦パン。
買ってきたチーズ4種。
買ってきたチーズ4種。
生ハム、枝付き干しぶどう、あんぽ柿。
生ハム、枝付き干しぶどう、あんぽ柿。

あんぽ柿?! と侮ることなかれ。上質のあんぽ柿はねっとり甘く滋味があって、こういう機会に取り合わせとしてとてもいいのだ。

さて、今回選んだシャンパーニュはこれ。

Agrapart & Fils Les 7 Crus
Agrapart & Fils Les 7 Crus

Agrapart & Fils Les 7 Crus(アグラパール・エ・フィス レ・セット・クリュ)は、近年評価が高いらしいアグラパールのスタンダードキュヴェ。シャルドネで有名なコート・デ・ブラン地区アヴィズ村にメゾンを構えているだけに、このスタンダードキュヴェもシャルドネのみで造られるブラン・ド・ブラン。名前の7クリュというのは、7つの地区の畑から穫れたぶどうを原料にしているところから付けられている。7つのうち3つのアヴネィ・ヴァル・ドール村、ベルジェール・レ・ヴェルテュ村、マルデュイユ村がプルミエ・クリュ、残り4つのアヴィズ村、オワリィ村、オジェ村がグラン・クリュ。
ここもビオ(自然農法)に取り組んでいて、 農耕用の馬もいるとか。土壌を大切にしているそうで、その名も「テロワール」という上級クリュもラインナップされている。

エチケットが暗い色使いなのでアップで記録しておく。
エチケットが暗い色使いなのでアップで記録しておく。

さて、7クリュは表記上ノンビンテージなのだが、実際はマルチビンテージで、2008年と2009年のリザーブワインが使われているとか。デゴルジュマン(澱引き)は2011年12月と、ちょうど1年前。

グラスに注ぐと、泡の勢いがいい。最終的には落ち着くのだが、その前にかなり泡立って、泡の層が長くできるくらい。

泡立ちがよい。
泡立ちがよい。

最初ふわりと香ばしい発酵香が立ち昇るが、いざ飲むとなると、まるで古いビンテージシャンパーニュのような深い香りがする。そして、ブラン・ド・ブランとはにわかに思えないようなコクとパワフルさがある一方で、いかにもシャルドネらしいきれいな酸味もあり、ミネラルも感じられる。軽やかさと深さが同居している、不思議な感じがしつつ、一口飲んで、「お、これはいいね!」と思える。

そうそう、チーズについても印象を少し。シュロップシャー・ブルーは、単に黄色いスティルトンというだけではない。スティルトンにはないコクがあって、逆に青カビ特有の鋭い部分は丸められ、いい味わいで、ブルーチーズが苦手な人でもこれなら食べられるのではないだろうか。
ゴルゴンゾーラ・マスカルポーネは、ゴルゴンゾーラとマスカルポーネのいいとこどり。ボリュームもあって食欲を満たしつつ、ゴルゴンゾーラの深みとマスカルポーネのふわりとした味わいが両方あってお勧め。
モテアラフィユは、 ナッツのような風味とクリーミーなタッチがいかにもチーズ好き向け。シェーブルのチーズは酸味の尖った物が多いが、これはこっくりした味わい。

色は淡い金色で、ブラン・ド・ブランらしい緑がかったものは感じられなかった。注いだところのこの泡を見ると飲みにくいのでは、と思うかもしれないが、この泡はしばらくすると細かく立ち昇るシャンパーニュらしさに落ち着くのでご安心を。

これだけ見るとまるでビールのようだ。
これだけ見るとまるでビールのようだ。

味わいはパワフルなので、軽いチーズだけでなく、買ってきたチーズすべてに負けることなく楽しめた。開け口と、ボトルの終わりの方とでは香りや味の変化は少ない。終盤、ややシャンパーニュ独自のほのかな苦味がややする程度だ。しかし、最初から深い香りがするので、ずっといい気分で飲んでいられる。酔い心地はブラン・ド・ブランの軽やかな感じ。

これ、ネットで探せば3000円代半ばくらいで探せるので、相当お値打ち品だ。数年すれば、きっとあっという間に有名キュヴェとして価格が上がることだろう。今までモエ・エ・シャンドンやヴーヴ・クリコのイエローラベルくらいしか飲んだことがなくて、「シャンパーニュってつまりは炭酸ガス入りワインでしょ(つまり、なんか良さがイマイチ分かんない)」と思っている人がいたら、それらを選ぶ代わりに是非これを飲んでみてほしい。「あ、シャンパーニュっていいな」と思えるはずだ。
それから、シャンパーニュを既に楽しんでいる人の中で「ブラン・ド・ブランの軽やかで優雅な感じと深い味わいが両方あって、色んな食事に合って、ちょっと通で、しかもお手頃なシャンパーニュがほしい」というワガママな人がいたら、そうした人にもお勧め。見つけたらすかさず手に入れておくかと思っていて、購入ライバルが増えると困るから、ほんとはこんなことは書きたくないのだけど。(笑)