付き合い遍歴 その6 遠距離の果てに


修に何故そんな変化が起こったのかは、考えないことにした。ただ、修の心理的・社会的変化に気づけはしなかったものの、肉体的変化については気づいていたことがある。

まず、ある時、乳首にピアスを開けたこと。クラブ文化華やかなりし頃で、タトゥーやピアスも流行っていたから、そこからの影響と考えると、そんな変化があっても不思議ではなかった。元々修の片耳にはピアスの穴が空いていたから、ピアスを別所に増やしたのだな、位の感覚で受け止めていた。

そして、後から思えばそういうことかと合点の行く出来事があった。

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遠距離時代に、当時俺の親が持っていたリゾートマンションに泊まりに行った時のことだ。一緒に風呂に入って、セックスを始めたのだが、修が被虐的態度を示す。こちらも調子に乗って攻めたら、尻を突き出してくる。それまで我々のセックスは挿入行為を伴わないもので、修からアナルセックスを求められたことはなかった。だが、求めてくる姿に俺も反応して、修の尻に石鹸を塗り、つつくとそのまま受け入れられてしまったのだ。修は苦痛に悶えることもなく、ペニスは屹立したままだった。その行為に修は慣れていたのだ。

真剣に考えていた5年半に及ぶ付き合いは、終焉を迎えた。振られたならまだしも、別れは俺から切り出したことだから、俺は誰かに慰めてもらうような立場にはなく、自分の無力感や落ち込みは自分で抱えているしかなかった。付き合いを真面目に考えていただけに、喪失感は膨大だった。そして俺の環境はといえば、初めての社会人経験で戸惑い、一方で司法試験が上手くいかなかった挫折感を引きずる一方で、出遅れた焦燥感もあった。

俺の何がダメだったのだろう。俺はダメなのだろうか。自分に価値を見出すのが難しくなっていた。俺の中身も背景も知らない状態で、果たして人は今の俺を求めるのか、需要を確かめたくなった。抑制された生活でくすぶっていた性欲も鬱積していたところ、付き合いが終わり、いきなりの解放によって何をしても自由な境遇が訪れた。そして、俺はセックス依存症になった。

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