付き合い遍歴 その3 速いクーペが駆け抜けるように


啓介と会ったきっかけは覚えていない。前の付き合いからさほど間隔は空いていなかったように思う。何度かお互いの部屋を行き来し、少しした頃、啓介は自分の車で自動車博物館に行こうと誘ってきた。俺は車好きだが、学生当時、車を持っていなかった。啓介は少し年上の医療関係者で、新車の3代目ソアラで現れた。3代目ソアラはバブル期の日本を象徴するようなラグジュアリークーペで、主に輸入車が好きな俺も、ソアラに多少の興味はあった。啓介は4ℓV8260馬力エンジンのソアラを駆って、東京から数百キロある博物館へと俺を連れて行った。

博物館は面白かった。車好きとしては、一度は訪れてみたい場所だったからだ。

啓介はいい人だったと記憶しているが、これが関係といえるのか怪しいほどの短期間、もののひと月足らずで別れた。俺への接し方もジェントルで、安定した職業を持ち、所謂モテ車に乗っていて、関係を築くなら相手に求めたい、あらまほしい条件を兼ね備えた人だった。

ならば何故俺はそんな人と数週間で別れたか? 以下の理由による。

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それは、 彼のペニスが短小でしかも先細りのきつい包茎で、セックスの最中に内股で女よがりをする人だったからだ。俺はまだ若く、セックスの相性や、相手に男らしくあってほしいということは、付き合う相手に求める重要ファクターだった。
ペニスの大小にはまったく拘泥がなかったから、短小はいいとしても、まるで幼児のような包茎はいただけなかった。それに高い声で「アン、ダメ…イイ…」とよがられると、俺の性器も気持ちも萎える。冷酷にも「そんな女みたいなのだったらいっそ女と付き合うよ」とさえ、内心思ってしまった。

そして俺は早々に啓介から去ったのだった。

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