癌の放射線治療に伴う味覚障害からの復帰記録 その1


再発癌(中咽頭側壁癌)の治療で放射線照射を受けた結果、味覚を失った。その場合、多くは治療終了から3、4ヶ月かかって徐々に回復していくというが、回復の過程を記したブログは探してもなかなか見当たらない。なので、自分の体験に基づいて、過程を記しておく。といっても、「多くは」回復していくとのことだが、回復するという保証はないなか、それを信じての記述である。

味覚を失っていく過程

味覚を失っていく過程については、このブログの再発癌の治療記録を参照。見返すと、2021/2/1から全7週に渡った治療のうち、まず旨味を長く感じる異変を生じたのが、早くも2週目頭の2/8。そこから味覚は失われていくのだが、3週目、治療開始後総合18日目では、後半に至ってもまだ果物をおいしく感じられている記述がある。その辺りのブログによると、既に旨味や塩味は感じられにくいことが分かる。酸味は4週目、総合24日目に至っても感じられている。翌日には甘味をほとんど感じられていない。

味がほとんど感じられていない、との記述があるのは、同週、総合27日目のこと。翌28日目にははっきり「味のしない物を飲み込む作業は辛い」とある。そして、5週目の29日目には「遂に塩気も全く感じなくなった。」と

味覚を失っての感覚と、摂取できる食事

味がしない物を口に運び、噛み砕いて飲み下すのは、苦行だ。何も食べたくなくなる。病院では経口の栄養補給液の缶を出してもらったが、気持ちが悪くて飲めない。いきおい、体重は減少する。放射線治療や抗がん剤治療は乗り切ったが、それは、治療開始以前に定期的にジムに通い、ワークアウトをして、体に筋肉が蓄えられていたことに助けられたのだと思う。結果、治療開始前は69kg前半あった体重が、8kg弱減った。

全く味を感じなくなってからも、2つの感覚が残っている。それは、感触としての脂気と、粘膜刺激による渋味だ。辛味もおそらく粘膜刺激があるから、そういう意味では残っているのだろうが、味でなく刺激だけの辛味は不快なだけなので、味わおうという気にさらさらなれない。そこで、脂気と渋味が食を助けるならと、重宝しているのが鰻茶漬け。カロリーも稼げる。

味覚を失っている食事の助けになる鰻茶漬け。
味覚を失っている食事の助けになる鰻茶漬け。

茶漬けがいけるなら、と、干物でやってみたら、見事に失敗。臭覚は正常なので、魚の臭みばかりが強調されて感じられてしまい、食べられなかった。鰻にも臭みはもちろん若干あるものの、干物に比べると少ない。鶏もも肉の照り焼きでも試してみたが、こちらもダメだった。

玉子かけご飯はいける。玉子の食感でずるずるすすれるので。

それから、元々の味が薄いものは割と食べることができる。例えば、パンやシリアル。パンは、特に焼き立てだと、香りに助けられて口に運ぶことができる。シリアルは、抗がん剤投与での入院中に一度出て、その時には既に味覚を失っていたが食べられて、ヒントを得た。うちでは普通のコーンフレークやミューズリー、グラノーラを混ぜて食べている。

うどんも心強い味方だ。最初に中咽頭癌に罹り(その時は2度に渡って手術を受けた)、リカバリーの時にもうどんは喉の痛みがある中食べられる物として、助けになった。今は味は感じられないものの、喉越しと出汁の香りでうどんを食べることができる。

さて、2021/3/17に、30回に渡る放射線照射治療を受け終えて、現在16日目。未だ味覚は戻らずだが、これからどう回復していくのか。まだ先は長い訳で、焦ることなく待ち、自己観察していこうと思う。

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