癌の記録 入院・手術


退院まで

前ページの歩行前に脚の加圧装置が外され、診察を受けて、落ち着いてから導尿カテーテルを外した。それまでは普通の下着でなく、T字帯をつけていた。T字帯装着は、手術室で麻酔が効いてからのこと。導尿カテーテルの挿入も。で、カテーテルを抜く段になって、今度は病室で麻酔なしで看護師が行う訳だが、その看護師が女性で、抜くのなど、この病院に勤めていれば日常茶飯事だろうに、T字帯がズレているのを見るや、照れ隠しで和ませようとしたのか「きゃーチンチンが、ちょっとチンチンが」と騒ぐ。管だらけになって苦しみながら寝ていればズレてチンチンのひとつも出るわ、と思うのだが、そんな言い方をされて、T字帯を普通に戻すが結局その件のチンチンを丸出しにして抜くのもその看護師。粛々とやってくれればいいものを、と思う。

次第に体から装着物が外されてゆく。外されてゆくたびに、少しずつ体の自由が利くようになっていくと嬉しいものだが、色々装着されていた中で、一番気がかりだったのは、首に挿されていた後頭部用・前頭部用の2つのドレーン。手術箇所に血や分泌液が溜まると、最悪の場合気管を圧迫し、気管切開などを行わねばならなくなるので、それを避けるために、血やリンパ液等の分泌物を排出させるための管だ。管の先にはプラスティックバッグに繋がっており(手術直後の写真で枕元に置かれていた赤い物がそれ。赤いのは血液が排出されているから)、まず血液が出なくなり、次いでリンパ液が排出される量が少なくなったら、ドレーンを抜く。

まず後頭部用に入っていたドレーンを抜いたのだが、自分の体内を痛みを伴って管がズルズル移動して抜けるのは、とても気持ちが悪かった。次いで、その2日後には、前頭部用が取れたのだが、後頭部用を引き抜く際の気持ち悪さと同じかと身構えていたら、それはあっさり取れた。何故なら、その辺りの感覚がないからだ。

神経がないことによる無感覚

実はこれを書いている現段階でもなのだが、手術部位を中心に、皮膚感覚がない所が生じた。ちょうど首を切開して捲くり上げたところ、左耳の下半分~首左側~鎖骨上部分だ。

青い部分が感覚のない箇所。
青い部分が感覚のない箇所。

手術箇所を触るのは怖いもので、入院中は、ドレーンが抜けるまではまったく触らず、ドレーンが抜けてからは濡れタオルで拭う程度だった。医者によると完全に回復するのは難しいが、ある程度は半年ほどかけて回復していくという。自分の体の一部に自分でないような感覚が生じる奇妙さ。これついては、長くなるので、退院後の日記にでも書く予定。

食事

手術翌日の夜にはもう粥が出た。食事は最大の懸念事項で、幸い縫合箇所からの出血もなく、順調ではあろうとのことでそうなったのだが、案外食べられるものだなと思った。病院食とはよく考えられているもので、硬さ、栄養、彩り、バラエティなど、本当にすごいと思う。普段、どちらかというと気ままま食生活を送っているが、ここで特段贅沢なことを言う気はさらさらなく、毎食ありがたく思いながら食べた。

術後1食目。特段写して楽しいものではないが…。
術後1食目。特段写して楽しいものではないが…。

これから3日して、普通の米飯食になり、おお、これは順調、すぐまたいつもの食生活に戻れるのでは、と期待。が、最初回復著しくても、そこからが長いと退院後に知ることになるのだが。いずれにせよ、口から物が食べられるというのは当たり前のことだと思っていたが、様々な器官や筋肉の相互作用で、高度な作業なのだなと認識した。

台風19号

土曜日の夕方には台風が来た。病床で暇を持て余し、逐一ネットでニュースを見るに、大変なことになっているらしいと。病院の場所は築地、建物自体は周りよりも少し高い所に立っていて浸水の危険はないが、周りはすべてダメになり、ここにアクセスできなくなるのではないか、そしてもし停電でもしたら自家発電はどれくらいもつのだろうかと危惧したが、幸いアクシデントは起こらず。

前日の夜景。
前日の夜景。

それでも、強風で建物が微妙に揺れ続けるなど、台風の来る時に病院で過ごすのは貴重な体験だった。医師も看護師も、おそらく多くは前日から泊まり込みだったことと思う。病院機能を普段どおりに維持するのには、人的にも大変な苦労があったことだろう。(次ページへ

2 Replies to “癌の記録 入院・手術”

  1. こんにちは❗
    その後、如何ですか❓
    ブログを読んでいて、大変な手術だったんだな改めて思いました。ちょっと僕が同じ立場になっら、決断できないかなと思いました。
    チンチンの件ですが、やっぱり何事も笑いに変えるというのは、大事だと思いました。それが大変であればあるほど。
    かなり昔、胃癌の手術を受けた友人が術後がまた大変だったと話していたことを思い出しました。暫く大変かと思いますが、どうぞご自愛下さい。

    1. はい、今回の手術の回復はまずまずで、食事に関しては何でも食べられるようになりました。
      後日対処が必要なことも出てきてしまったのですが、それはまた術後のこととしてまとめて書こうかと思っています。
      チンチンの件は看護師さん、よほど苦手分野で照れ隠しが裏目に出たのか何なのか。こっちが冗談としてやり過ごす手に出る他ないですね。
      いつもお気遣いいただき、ありがとうございます。

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