癌の記録 入院・手術


手術の概要

受ける手術は「中咽頭部分切除および頸部郭清術」。左の扁桃腺と首の左側のリンパ節を取るもの。扁桃腺は口の中から。リンパ節は、耳の後ろ側からうなじの生え際近くを通り鎖骨上までをノの字状に切開し、そこを捲くり上げるようにして取る。

切開箇所。説明文書より。ドレーンについては後述。
切開箇所。説明文書より。ドレーンについては後述。

時間としては、扁桃腺を取るのに15~20分、リンパ節を取るのに2~3時間を予定しているとか。この手術に伴い生じうるリスク等を、術式と共に説明を受け、文書に同意の署名をする。生じうるリスクについてはすべからく説明するのが病院側の義務だけに、神経の切断によって表情にこわばりが生じたり、酷くすると水を飲んだ時に口の左側の感覚がなくて水が漏れたりすることもあり得るなど。可能性は低いが、なくはないとのことだが、受ける側にとっては、可能性はあるかないかの二択であり、げんなりもするが、「同意する」ボタンを押さねば使うことができないアプリと同じで、これに同意しない限りは手術を受けることはできない。

手術当日

翌日はすぐ手術。開始予定時刻は8時45分。最近、多忙を極めるじょにおだが、さすがに一大ライフイベントなので頑張って朝8時には来てもらった。前にも書いたがまな板の上の鯉なので、鯉としては早く捌いてもらいたいものだが、予定時刻になっても呼び出しはかからず。準備が遅れているのかと、多少ナーバスになりながら待つ。

検温しつつのこの表情の、憮然たる有様。
検温しつつのこの表情の、憮然たる有様。

9時前にバタバタと看護師が呼びに来、いよいよ鯉はまな板の上へ。手術室には歩いて向かう。付き添いは手術室前までは行けず、じょにおとはエレベーター前で手を振って別れる。案内され、手術室前で執刀医と会い、スタッフも立ち会いの元、名前と受ける手術の最終確認。入ると、煌々たる照明の白い空間に手術スタッフがいて、横たわるよう促される。頭の下に敷く物のことで、素人目には些細なことには思えるのだが、若い男性スタッフが、ベテラン女性スタッフから厳しく注意されていた。それを見て、かえってそうした細かなことに気づいていち早く指示を出す、こういうベテランが仕切っているのは安心だなと思う。

横たわって見える景色は、映画などで見るあれそのままなのだが、ここの手術室は想像したよりもっと先鋭的で、まるでSF映画のような感じ。手術室横には、手術の様子を見ることのできる大きなガラス窓で隔てられた別室がある。宇宙生物に寄生された登場人物になったような気分がする。たいてい、そうした人物は悲壮な最期を遂げる訳だが、これは現実。普通に終わり、ここを出るのだろうな、と予感する。
そして、天井にはクレーンがあって、撮影が控えている。事前説明があり、学術目的で撮影させてほしいと言われていて、同意した。逆に俺からは、その動画を後日もらえるようにリクエストしておいた。特にここで公開の予定はない。個人的に、手術はどのように行われるのか、異状のあった器官はどうなっていたのか、個人的興味で知りたかったのだ。「動画ファイルそのものをもらえなければ、診察室でモニターを見ながらの概略説明でもいい」と言っておいたのだが、執刀医には快諾してもらえ、動画はもらえるそうだ。

少し話が横道に逸れた。その後、数ステップあって、麻酔薬が投入され、手術台の高さが上げられる。上昇しつつ、ぼうっと全身と空間の堺が曖昧になるような感覚。覚えているのはそこまで。

全身麻酔の手術経験のある友人が以前言っていたことには、手術自体は本人の感覚では「ちょっと寝落ちしてたかな」くらいですぐ終わると言っていたが、確かにそんな感じだった。が、手術が終わったのは午後3時(覚醒した時に時間を告げられ、知った)。首と口の中を切られた「だけ」なのに、全身の自由が利かない。回復室の他のスペースで手術を受けた人が「ここは回復室という所です。ここで病室に行ける状態になるまで、ちょっと様子を見ますからね」などと説明されているのが聴こえる。それを聴かずとも、回復室にいるのだろうということは分かったが、あれ、俺にはそんなこと言ってくれたっけなと思いつつ、待つ。待つ、というか、ひたすら横たわって時間の経過に耐えるしかない感じだ。

そしてややあって(どのくらいの時間だったかは思い出せない)ベッドのまま運ばれて回復室を出、病室に運ばれる。天井が流れていく。これも映画か何かのようだ。案外移動スピードは早いものなのだな、などと感じつつ病室にベッドが固定される。少しして、「ご家族の方をお呼びしますね」と言われて、じょにおが病室に来てくれた。
何せまな板から下ろされた後の鯉は、大変な飾り付けがされていて、そのゴージャスぶりにじょにおは戸惑っていたようだ。酸素マスク、首からのドレーン2つ、心電図モニター、酸素飽和度モニター、点滴、血栓ができるのを防ぐための両脚全体を覆う加圧装置、導尿カテーテル等…予めそうなるとは知らされていたものの。

見る方も気持ちのいいものではないと思うので、モザイクにて。
見る方も気持ちのいいものではないと思うので、モザイクにて。

この状態では話しかけられたことに対し、わずかにうなずく程度しかできず、どの位の時間じょにおがいたのか覚えていないが、大体のところで切り上げてもらった。じょにおが帰った後か、まだいた時か、覚えていないが、執刀医が来て言うには、手術で取るべきところはきれいに取れ、順調に行ったとのこと。(次ページへ

2 Replies to “癌の記録 入院・手術”

  1. こんにちは❗
    その後、如何ですか❓
    ブログを読んでいて、大変な手術だったんだな改めて思いました。ちょっと僕が同じ立場になっら、決断できないかなと思いました。
    チンチンの件ですが、やっぱり何事も笑いに変えるというのは、大事だと思いました。それが大変であればあるほど。
    かなり昔、胃癌の手術を受けた友人が術後がまた大変だったと話していたことを思い出しました。暫く大変かと思いますが、どうぞご自愛下さい。

    1. はい、今回の手術の回復はまずまずで、食事に関しては何でも食べられるようになりました。
      後日対処が必要なことも出てきてしまったのですが、それはまた術後のこととしてまとめて書こうかと思っています。
      チンチンの件は看護師さん、よほど苦手分野で照れ隠しが裏目に出たのか何なのか。こっちが冗談としてやり過ごす手に出る他ないですね。
      いつもお気遣いいただき、ありがとうございます。

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