ジャガーXE 20d プレステージ 2ヶ月乗ってみての印象


ジャガーXEのディーゼルエンジン

インジニウム・ディーゼルエンジンはジャガーの売りの一つ。エンジン音はよくチューニングされていて、停車時のエンジン音は、これをディーゼルと意識すれば判別できるだろうが、車に詳しくない一般の人だと気づかないかもしれない。それは車内にいても、外でも同じ。街で耳にするBMW 320dやメルセデスC220dより明らかに音の質もいいし、カラカラ音は抑えられていてうるさくない。ガソリン車の音に馴染んでいたので、耳慣れるまでは異質に感じたが、3日もすると慣れてしまった。しかし、停止している時の細かな振動は、やはりガソリンに比べると気になるかもしれない(後述のアイドリングストップ参照)。

走っている時には、定速だとほとんどエンジンの存在を感じない。加速時に聞こえる音はやはりディーゼルだなとは思うが、グゥウウ、という音で、悪くない。

ダイナミックコントロール別の走り

ダイナミックコントロール(走行モード)はダイナミック、標準、エコ、ウィンター(スノー)と選べるが、交通量が多く前走車がいることもしばしばの都内では、エコが良いと思う。標準よりもアクセル開度に対するエンジンの反応が鷹揚で、早めにシフトアップし、なめらかで高級車らしい感じがするからだ。車に酔いやすい同乗者がいる時もエコがお勧め。エコでも加速にストレスを感じることはほとんどない。ただし、エコはエアコンの動作やシートヒーターにも影響するようなので、真夏や冬には向かないかもしれない。

標準にすると、エンジンの存在を認識する機会が多くなる。また、アクセルに対するエンジンのレスポンスもエコよりは当然敏感に。アクセルを7分目も踏み込めば、みるみるうちに加速する。街なかでベタ踏みする機会はまずないだろう。不用意にアクセルを踏むと、ガッと出るので、同乗者がいる時には配慮が必要。この設定が標準なのは、やはりXEはスポーツカー寄りということか。

ダイナミックモードにすると、アクセルレスポンスはさらに俊敏に。メーター表示は赤基調に切り替わり、タコメーターが中央に配置される。さらにシフトをDからSにすると、パドルで任意のシフトポジションを維持するようになる。山道でのドライブを楽しむにはいいだろうが、市街地では過剰な感じさえする。
ちなみにSモードでかつダイナミックにすると、シフトチェンジはすべて自分の選択に委ねられ、自動でのシフトアップ/ダウンは行われない。マニュアルにはレッドゾーンを超してもそのギアを維持する、という怖いことが書いてあるのだが、果たしてこの車に必要なのか?とも思う。が、そうした過剰な要素もあるのが、ラグジュアリースポーツサルーンというものなのだろう。

アイドリングストップ

アイドリングストップだが、XEの初期ディーゼルモデルでは「再始動時のブルンと来る振動が許容できないレベル」という主旨のレビューを複数見た。少なくともうちの車では再始動時にアイドリングストップをオフにしたくなるほど気になるブルンはない。これも報じられない年次改良だろう。納車されて早々、車を整備に出す必要があって、その際に3、4年前のガソリンに乗ったのだが(後述)、それはガソリンエンジンなのに結構ブルンと来た。
再始動もブレーキリリースでエンジンスタートし、機敏。停止した途端に再発進というシチュエーションでも、痛痒を感じることはない。アイドリングストップさせずに停止している時のエンジンの振動が気になるなら、アイドリングストップを活用すべき。

オートホールドブレーキはない。エレクトリックパーキングブレーキはクリーピングを抑えて止まっていることができるので、それを使って信号待ち等でブレーキから足を離すことはできる(ブレーキランプは消灯し、エンジンはかかるが)。もしくは、ACCによる方法もある(後述)。

8速オートマティック

DS4は初代セミオートマのシングルクラッチ6速EGSで、ダイレクト感はあったが、シフトチェンジの時のタイムラグ、特にスタートで1速から2速に変わる時や、キックダウンして下のギアに入れる時には、ストレスもあった。
XEは普通のトルコンATで8速。速度を上げるとすばやくシフトアップしていき、なめらかな印象。そして通常のインパネ表示では何速に入っているか分からない。パドルを引くと何速に入れたかの表示が出るが、一旦パドルでシフトチェンジすると、その時入っていたシフトを保つので、解除して自動に戻すには、+側のパドルを1秒長引きする。

急加速時のキックダウンは適切だが、エコモードと通常モードでは明らかにレスポンスが違うので、素早い挙動を求めるなら、通常モードを選択するのが良い。

足回り

サスペンションはいい。ガタガタするはずの荒れた路面のショックは、厚めのゴムでも引いたかのようにうまく吸収する。コーナーをあまり減速せず曲がろうとすると、脚は踏ん張る一方、トルクベクタリング・バイ・ブレーキでするっと抜けてゆく。ハンドリングの素直さと相まって、運転がうまくなったように感じる。

その一方で、履いている225/45R18のダンロップSPORT MAXX RTは、細かな路面の凹凸も伝えてくるスポーツ向けの仕様。走行中、エンジンや風切り音の遮音がきちんとしている結果、一番耳につくのはタイヤのパターンノイズで、路面の舗装のちょっとした違いでそのノイズも異なって聞こえてくる。また、路面の細かな凹凸についても、情報が伝わってくる。ほとんどが都内の道の走行で、せいぜい70km/h以下位という自分の用途からすると、このタイヤはあまり好みではない。俺は快適に乗りたいのだ。

ACC

オールサーフェスプログレスコントロール(時速3.6km~30kmまで)は、名前のとおり路面状態を問わず進行する際に車両をコントロールする機能で、低速走行のクルーズコントロールとして使える。低摩擦路面のコントローラーはまた別。ASPCは、駐車場のビルで長い螺旋上の坂を下る時などで有効。下りではディセントコントロールモードを使える。ランドローバー/レンジローバーとの共通性を感じる点だ。

普通のACCは時速30km/hから。しかし日本では高速道路での使用を前提としていて、穏やかな加減速での追従を行うので、市街地ではACCによる加速が穏やか過ぎて前走車との車間が必要以上に空いたり、減速時に人間ならばやや強めながら普通にブレーキを踏めばいいシチュエーションで、ACCではABSの作動音がガガガガっと鳴ったり、前の車の制動が下手だとこちらも追従して下手になったりして、お勧めではない。信号で止まった時に、前走車がいればアイドリングストップを作動させたまま追従して車両は止まるが、先頭では当然止まらない。基本、XEは自分で操縦するべき車と思う。車が好きな人が選ぶ車なのだし。ただ、高速道路では使いやすいので、本来の目的には沿っている。

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