愛せない買い物 日本の家電デザインの酷さ


洗濯機を買い換えた。従来のはじょにおが一人だった頃からずっと使ってきた物で、年季も入ってきて、洗濯槽裏側の黒い汚れ(通称「ワカメ」というんだそうだ)が、洗濯槽の洗浄剤を繰り返し使っても浮いてくるようになってきたので、新調することにしたのだ。

最初、ドラム式にしようかと思ったが、デザイン的に見て国産のは全滅。それに、うちは屋外の物干し場は広いし、雨の日に乾燥させたいなら浴室乾燥機能を使えばいいので、乾燥機能は要らない。機械の信頼性に関しても、ドラム式は未だ故障も多いようで、身近な人で2年で3回故障したという話もある。なので、デザインが悪くて余計な機能がついていて信頼性がないなら、やめておいた方がよいという判断。

となると、Mieleなどの外国製品かとも思ったが、たかだか洗濯機ごときに30万以上するなら、水回りごとリフォームした時にでも組み込みたくなる。防水パンの別対応も必要なようなので、迅速かつ簡単に買い換えたい今の我が家の需要とは合致せず、これは却下。

そこで消去法的に縦型の洗濯機にしたのだが、やはりデザイン的には見るべきものは何もない。というか、むしろ見たくない類なので、粛々と働いてくれればそれでよし、と割り切った。しょっちゅう目にする物でもないし。

しかし、洗濯機という物に関しては、本来の洗浄能力についてはまあまあにせよ、デザイン的には絶望。国産車と同じで、デザイナーが美的センスの低い環境に育ち、そのまま美的にも知的にもレベルの低いままの生活をしている場合が多いから、とんでもないのが出てくるんだと思う。しかし、何でこう日本の家電は…と、納得が行かない。洗濯機で特にひどい点を列挙するに:

▼ドラム式は何故揃いも揃ってガチムチで、罰ゲームで白い粉をかぶったドラえもんのようなのか? 何故もっと筋肉質でソリッドなデザインができないのか。
▼吐瀉物のような黄土色が何故「シャンパーニュ」というの名称なのか? 今時のラブホもびっくりのピンクは「かわいい」のか? そして何故そんな色を物体のトップにあしらうのか。
▼ECONAVIなどという余計なランプを取り付けて点灯させたりしない方がよっぽどエコなのではないか。
▼洗剤の量なんて洗剤のパッケージに使用量の目安が書いてあって容易に分かる。ご丁寧にキャップに目盛りまでついているのに、何故わざわざWebまで情報を取りに行って、その結果をスマホでタッチしてやらねばならないのか。それは「スマート」なのか。

ネーミングセンスにしてもそうだ。
▼なぜ洗濯機のドアの中央に”ZABOON”と書かねばならないのか。それは本気でいいネーミングと思っているのか。
▼「カスタム」と表示すれば済むコース設定のボタン表示が、何故「手造り」とか「わがや流」なのか。
▼これっきりボタンなんてこれっきりにしてほしい。
▼そういえば昔「愛妻号」なんてのもあった。

ああ、書くだけで顔が紅潮するくらい恥ずかしい…。余計なことはしなくていいから、まっとうな形のまっとうな物をまっとうに提供してほしい。ただそれだけなのだが。家電メーカーのセンスとはいったいなんぞや?

そこで、あらためて新機を見るに、気になることがたくさん:

てんでバラバラの色使い。緑に中途半端なブルーグレーにオレンジにディスプレイは赤。どうしたらこんなことができるのか、聞いてみたい。
てんでバラバラの色使い。緑に中途半端なブルーグレーにオレンジにディスプレイは赤。どうしたらこんなことができるのか、聞いてみたい。
フォントもこれまたバランバラン。INVERTERの文字、必要?HITACHIのロゴ、重量表示、型番、操作ボタン…。しかしこれだけでは済まず。
フォントもこれまたバランバラン。INVERTERの文字、必要?HITACHIのロゴ、重量表示、型番、操作ボタン…。しかしこれだけでは済まず。
Air Jet DRY(何故かDRYだけ全大文字)、意味不明のALLEROFF(除菌消臭フィルターの固有名詞らしい)、その上の謎なマーク、そしてBEATWASHの文字。これをカオスと呼ばずして他に何と呼ぶ?
Air Jet DRY(何故かDRYだけ全大文字)、意味不明のALLEROFF(除菌消臭フィルターの固有名詞らしい)、その上の謎なマーク、そしてBEATWASHの文字。これをカオスと呼ばずして他に何と呼ぶ?

我が家で新しく物を買う場合に、ひとつの基準がある。それは、「見た目に一目惚れするかどうか」。「まあいいでしょう」という許容範囲内で物を買うことも、なくはない。しかし、体積が大きかったり、目につく物は、殊他に選択肢がある場合には、惚れること=愛せる気持ちがなければ選ばない、というのが一つの基準で、にしろ、ランプにしろ、テーブルにしろ、物はそうした基準で選んできたのだが、洗濯機に関しては、ナリがデカいのに愛するのが難しい。せめて願わくば、きちんと働いてくれますように。