ワールド・エイズ・デー


レッドリボン(最近は乳がんキャンペーンのピンクリボンを多く目にするが、HIV/AIDSに関するキャンペーンはこちらの赤いリボン)
レッドリボン(最近は乳がんキャンペーンのピンクリボンを多く目にするが、HIV/AIDSに関するキャンペーンはこちらの赤いリボン)

今日はワールド・エイズ・デー。震災だの原発だのと今年は大惨事があって、それに隠れてか、どこもお金がなくて厳しいせいか、例年よりもHIV/AIDSについては耳にする機会が少ない気がする。今年第3四半期の新規エイズ患者(HIVポジティブではなく、エイズを発症した人)の数は、前年同期に比べて微減だったとか。しかし数字を見ると、微減といっても、111人→108人というわずか3人の減少では、傾向として減ってきたとは言いがたく、これは「ほぼ変わらず」という言い方の方が正確と思う。

感染者数は日本では世界の減少傾向に逆行し、増加している。2010年の国内の新規HIV感染者は1075人で、1984年以来3番目に多い数とのこと。教育が行き届いている先進国であるはずのこの国のこの状況、どうしたものか。

ここからは多少あからさまな表現の言葉を使う。同性愛者の「出会い系」と言うとまだオブラートに包まれた言い方なので、もっとはっきり書くと、即ヤリ系の掲示板とかSNSでは、「生掘り種付け」が多々見られ、開き直りとも言えるような状況という。そういうことにファンタジーを持っている人は、少し前ならまだ遠慮がちに地下で活動していたはずだが、最近は大手を振って出ているのは、何なのだろうか。感染しても死なない病気になったから? 周りに感染している人がいない(正確には知らない)ので、直接見えないものはないことにするという想像力の欠如のせい? それとも、既に感染していて誰かを道連れにしたいからだろうか?

いずれにしろ、そうした傾向にはとてもじゃないが、賛成することはできない。死なない病気になったとしても、薬の副作用に苦しむ人は多くいるし、経済的・心理的負担も大きい。今健康を保っているポジティブの人でも、体調が悪くなったらどうしようかとか、突然脳症になった他の人の例を知って自分もいつそうなるか分からないと不安がる人もいる。そうしたことに考えが及ばないで、あるいは「考えたくないから」と見なかったことにして、ひたすら無分別な行為に及ぶ人達には、現実を見て、知って、想像してみてほしいと思う。特に、「考えたくないから」と見なかったことにしてそうした行為に及ぶ人は、何故自分がそうしようと思うのかを冷静に考えた時、どこかAIDS/HIVに恐れを間違った形で抱いているからではないのかということに、気づいてほしいと思う。

そして、既に感染していて、自分だけ苦しむのは嫌だ、貧乏くじを引いたなら周りにも引かせてやるというのは、立派な犯罪行為。「生掘り種付け」募集のところには、ありえなくもないと思うが、こうしたことには後暗いものを感じる。ついでに言うと、「種付け」なんて、競走馬じゃあるまいし、そんな言葉を誰が人間のセックスに持ってきてしまったのだろうか。

異性愛者にしても、聞くと、HIV感染よりも妊娠の方が頭にあるようで、「外出し」すれば妊娠は防げるからと、生でやってしまう人も多くいるようで、そこにはHIV感染のみならず、他の性感染症も含めて危険があることに思い至ってほしい。

そういえば、ワールド・エイズ・デーに合わせて、例年はmixiのコミュニティーで、トップ画像をレッドリボンに変えるアクションをしていた。これについては思うところあって、今年は自分ではアクションしていない。mixiの、ユーザーを置き去りにした改悪やら何やらで、mixi自体から心が離れていて、周りにはログインも間遠になった人が増え、そこでアクションすることの有用性を疑問に思うからだ。mixiでのニュースやらチェックやらを見ていても、この間書いたことと似ているが、コピペばかりでうんざりしていて、それもアクションを手控える一因になっている。(コピペばかりで情報を流布しようとする人の意図は何なんだろうか?)

それに、HIV/AIDSについての予防啓発に関しては、無力感を感じているのも事実。結局、関心を持っている人にしか情報は行き届かず、関心を持たない人、無視しようとする人には何をどう言おうと結局ダメなんじゃないか、とさえ思う。↑の、生掘り種付け系の隆盛ぶりが、その証左ではないのかと。

個人的な関心度合いはどうかというと、友人でHIVポジティブの人達は概して安定していることもあって、関心を失ってはいないものの、やはりやや薄れてきつつあるのも否めない事実。これではいけない、とも思って、せめて感染者数の推移とか、テレビで特集があればチェックするようにはしていたりするのだが。

今年のワールド・エイズ・デーは、なんとなく割り切れない思いだ。