長編叙事詩 孤独な王 後編


前編より続く)

男は食事を終え、いよいよ王と対峙するときがやってきた。男はそそくさと王の鎧を脱がせにかかった。男のパートナーはその場から遠ざかり、男と王が触れ合っているのを見ようともしなかった。それは、一義的にはパートナーは王を拒否する意思表示なのだが、二義的には、男が王を楽しむのを、男の望むがままにやらせておいてもよいという、男への受容の姿勢でもあった。男はそんなパートナーのことを、男とパートナーとで王を楽しむことはやはりできなかったのかと残念に思いながら、しかし王との睦事に喜びを隠し切れず、王に向かい直った。

男の手にかかると、王の鎧はするりと脱げて、肉感をともなったむっちりとした王の中身があらわになった。それは、すでに準備ができていることをアピールしつつ誘惑していた王の望みどおりになったともいえ、男は脱がせることに手馴れていた結果ともいえる。ともかくも、王はそうなった後はもう、男に味わわれるだけだった。

そして男は、王を楽しむ様があからさまにパートナーに見えないよう気遣って、ダイニングでそれから先のお楽しみに興じることを諦めた。そして王を伴い、テラスに出た。屋外は大胆すぎる気もしたが、扱う王はといえばもともと豪胆、そんな場所でもよかろうと踏んだ。楽しむ前に、鎧を脱がされて中身をあらわにした王をもう一度、まじまじと見た。脱いでも王はなお、王だった。他の青二才とはまったく性質を異にする、やや弾力を伴った姿態は、動物的な肉感で、はちきれんばかりだ。

王の中身。
王の中身。

おもむろに、男は王を、口に含んだ。口に含む前に王の「あのこと」が、ぷんと鼻についたが、それはもはや、至上の快楽のためのスパイスでしかなかった。考えてみれば、肉体的な喜びを得る時には大抵、ちょっとしたそういう汚れ物はつきもので、そうしたことは予め折り込み済みでなければ、秘した快楽など手に入らないものなのである。男は、王を楽しむつもりで、王に逆に支配されていた。ねっとりとした王を舌で感じながら、王が自分の脳に快感を伝え、まるで酔わせるように男の口中に王が広がった時、男は王の真髄を、数年ぶりに体感したのである。
たまらずに男は王をむさぼり、あふれんほどに王をほおばった。王の中心部は堂々たるボリュームで、男の一口ではとても収まりきらないほどであったから、男は王を口に含んでは、快感にむせんだ。ああ、たっぷりと。そして、ねっとりと。男はその間、パートナーのことを忘れ去って、王の提供する快楽に、しとどひたった。

王は、男に味わわれたとたんに、耐えかねていたかのように、内部に溜め込んでいた濃厚なそのクリームを提供し、あとに種を残した。種はまた堂々としていて、快感の証拠として残った。そして男の尽きせぬ欲望は、王のクリームを含んでは種を出させることの繰り返しを、なんと3回も、間を置かずに行ったのである!

王の種。
王の種。

男は、王とのめくるめく愛の時間を終えると、満足気な吐息とともに夜空を見やりつつ、よガーデンチェアの背もたれに体をもたせて放心した。獣の交歓を一気にやりぬいた余韻が男にただよっていた。王は消えた。しかし、王のあのにおいはその場にまだ留まり、男がそこで王を楽しみ抜いたことを宣言していた。

生理的な欲望を果たした男は、体裁を整えると、屋内に入り、後始末をした。そしてパートナーを見ると、パートナーはあきれたように男を見、それでも「楽しめた?」と笑顔を見せて、王を味わった男を寛容にも許した。男は気恥ずかしいような気分がしたが、まだこれが全部の王ではないことを思い出し、王の再びの味わいを思うと、頬が紅潮する思いで、なお、ぽうっとなった。聞くところによると、王は酒と相容れないのだという。酒飲みは王に殺されてしまう、という話さえあるが、あれだけの陶然となる生理的快感をもたらす王のためであれば、その前後には酒などそもそも要らないものだな、と、男は思った。

(完)