雑記:美学・わがまま・趣味趣向


1週間ほど前、華道家の前野博紀氏がテレビ番組で紹介されていたのを見て、いろいろ考えた。前野氏は、ホテルに就職後、「ビジネスインストラクター」を経て華道家になったと のこと。その後活躍めざましく、注目されている人だ。

まずは、自分の美に対する求道心が、日ごろ知らず知らず緩んでいるなと思った。「まあいいか」の集積は、いつの間にか感性を鈍らせ、美から程 遠いところに身を置くことになってしまう。着る物一つとってもしかり。前野氏は素敵なプリントの服を着ていて、カラーコーディネートも素晴らしく、fashion victimにはならずにいい着こなしをしていた。「美の求道者である華道家としては、たたずまいから自分の職業のプレゼンテーション であらねばならない」と考えるとごく当然なのだが、自分の服装を顧みてみると、最近、いつも同じような服を着ていて、服に意味性を持たないような格好をしていたりする。反省しきり。

印象に残ったことはいろいろあるが、ひとつ、ビジネスマンのための生花教室をやっていて、右肩上がりの枝葉を切ることについて。鋏を「決断の鋏」と 称し、「何を残して何を切るか」を判断することが重要と説く。そのうえで、右肩上がりが原則でも、大事なポイントが他に見つかったら、そこを切ることもあ り得るとする。これはまさに、ビジネスシーンのみならず当てはまることで、新しいことをするには、今までのものをすべて抱えたままで後生大事に持っていて も、やれないことがある。我が身を振り返って考えてみると、いつの間にか保身に走って、会社勤めという社会的システムに乗ったまま、そこから出ることをた めらっているうちに、逆にそのシステムに取り込まれてしまっている感があって、これでは新しいことはできない。踏み出す勇気が必要だと思いながら、ずるず るきているのを何とかする必要があると思った。

前野博紀氏公式ウェブ:http://www.kashomaeno.com/

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パートナーじょにおにとっては、俺はわがままなのかもしれない。まあ確かに、上げ膳据え膳とまではいかないけれども、我が家では俺は甘やかされていて、やれ「肩を揉め」とか、「コーヒー入れて」とか、「今日は週末だから遅くまで起きてる」とか言ってみたりしている。とはいっても、俺は何もしないわけではなくて、ドリップコーヒーはじょにおがいれてくれるが、ラテ担当は俺だったり、じょにおの夕飯の希望を聞いて作ってみたりと、俺がじょにおにサーブすることもあって、だいたい負担としては半々だと思っているが、それでもかなり俺はじょにおに甘えている。じょにおの寛容さと俺への愛あってのことだと思い、どうふるまっても、じょにおの愛への感謝だけは忘れないようには、心がけている。

そうした自分のみに関わる要求だか欲求だかといったことの他に、「次の一緒の休みの時にはこうしたい」だとか、何か家の買い物をする時に「これがいい」だとかいった共通の決定事も、ほとんど俺のリクエストを通させてもらっている。もちろん独断で決めるのではなく、おうかがいは立てて、双方納得・合意のうえでのみ実行という運びではあるが、言い出しっぺが俺ということに焦点を当てれば、やはりわがままということになるだろうか。そういえばこの間、インテリアショップに行ってダイニングテーブル用のペンダントライトを購入したのだが、それも俺がインターネットで見つけて、「どう?」と聞いたものだったし、またしてもコストコに行ってガジャガジャと買い込んできたのだが、じょにおも承認してはものの、俺の言い出し→じょにおが応じる、という流れ。たまには変えた方がいいかもしれない。間違っても主従関係は作りたくないし、古風な「旦那」面をするつもりもないし、男女の夫婦のまねごとをするつもりも、これまたないので。

ちなみに、↓が件のペンダントライト。

3連になっている。光源はハロゲン。
3連になっている。光源はハロゲン。
消灯しているところ。シェードはアクリルではなく、リアルなガラスで透明感がある。
消灯しているところ。シェードはアクリルではなく、リアルなガラスで透明感がある。

コストコの買い物はこんな状態↓

またも食料品をいろいろと。サン・ペレグリノが500ml 1本あたり50円台なら、買うでしょう?(笑)
またも食料品をいろいろと。タイフードやら、ワインやら、チーズやら。サン・ペレグリノが500ml 1本あたり50円台なら、買うでしょう?(笑)
金色のインゴットのようなケースの正体は、オーストリアのデザートワイン。
上の写真の中央にある金色のインゴットのようなケースの正体は、オーストリアのデザートワイン。
"Liquid Gold"と銘打たれているだけあって、中身は黄金色。等級はベーレンアウスレーゼ。
“Liquid Gold”と銘打たれているだけあって、中身は黄金色。等級はベーレンアウスレーゼ。

しかしまあ、こんな気ままにしているのは、ゲイカップルならではか。子供を育てるとなると、こうは行かないだろう。もとい、好き放題を許してくれているじょにおには、感謝。

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近所に住んでいるあべおとこの前、新宿二丁目のココロカフェで食事をしながら、人の趣味の話になった。「あの人はああいう趣味を持っていて、どうのこうの」というよもやま話だったのだが、ふと、自分の趣味は何かと考えてみたら……。

趣味がない。

これは、由々しき問題だ。上の前野氏で書いたことの根底には、自分が何者であるかということが42歳にして定まっていないという問題があるのだが、「生きていてこれが楽しみ」と言い切れるものだがない、これは、困ったことだ。ウェブサイト作りもお金がもらえるレベルでできる、英語もビジネスで支障なく使える程度は使える、人がお金をもらってクラブに踊りに行くところでおどってお金をもらえる程度にできる、曲も作れる、と、満艦飾に見えて、何もないではないか。趣味がないとボケが早いとも聞くし。うーん。最近、料理が趣味といえば趣味だから、この際料理教室にでも行って磨くか。しかし、自分が定まらないままここまで来てしまったというのは、本当に問題だ。<>