職場の雑談


俺の職場では、基本雑談をしない。隣席の変なウニョウニョを除けば、基本いい人達ばかりだが、皆やるべき仕事がたくさんあるので、雑談をする暇がないのだ。

いや、正確に言うと、朝来た時に隣同士で少し雑談をしている女性もいるので、「俺の職場では」ではなく、「俺は職場で」か。

ともかくそんな状況だ。「今朝は雪が残ってましたね」などとも言わなければ、「アバターよりハート・ロッカーがオスカー穫ったのは、内容を考えると政治的判断としては正しいかもしれませんね」なんてことも言わない。おかげで、前に座っているが仕事の絡みのない人が何区(あるいは何市)に住んでいるかも知らないし、考えてみると名前も今思い浮かばない。

そんな訳で、ついぞ自分がゲイなどということは話す機会もなく、パーソナルで機微な問題は、お互い知る由もない。仕事でよく組む人のお父さんが亡くなったのも、弔慶休暇の連絡がメールで来て初めて知った有り様だ。

これでもし一人暮らしだったら、しゃべりたいことをしゃべるために声帯を震わせるのは、一週間に何分かという事態さえあり得るのではないか。

普段みんなは職場で何気ない会話をしているものなのだろうか? 同じ島(デスクの集まり)で個人的な口を聞かない人がいる、この状態は異常? 俺としては、人間的に興味を持てるような対象ではなくても、天気の話くらいはしてもいいかなという心境ではあるが、(但し隣のウニョウニョを除く)会話がないならないでもやっていけるし、不便も殺伐も特には感じないのだが、こういう生活では、仕事の能率は上がったとしても、人の輪は育たないし、人間的な成長がないなと思う。