分収育林が分収期を迎える


亡き祖父(母方)から引き継いだ分収育林があるのだが、それが今年、分収期を迎えるとの通知が、春にあった。分収育林とは緑のオーナー制度とも言われるもので、森林の育成を目的として、林に持ち分出資し、林の管理は森林管理局が行うというものだ。林は長野県の木曽、塩尻市贄川にあり、中部森林管理局の管轄だ。

林の生育状況について、年1回レポートが来る。分収の時期を迎えても、競売不調により売買不成立ということも、長年あった。そこへ来て、昨今のウッドショックで、林の売却益が見込める状況となった。そんな状況下で分収期を迎えた林は、売却手続きに入ることになった。分収期の契約延長(10年)を申し出ることもできるが、持ち分を所有する人が1人でも販売希望がいれば、契約延長は無効となり、売却手続きに入ることになっている。

俺としては、祖父の意向を引き継ぎ、契約延長を希望した。祖父は戦後満州から引き上げてきて山深い木曽に根を下ろし、その自然を愛し、自然を保全する目的で分収育林に出資し、長く保全したいとの思いから、子供でなく、生前、次々代の俺に権利を移行したのだった。

しかしながら蓋を開けてみれば販売希望者が過半数を大きく超え、林は販売されることになった。資料を見ると、契約は昭和60年(1985年)8月。制度の発足は林野庁のウェブサイトによると昭和59年度となっているから、制度発足の翌年には契約していたことになる。以来37年を経て、いよいよ伐採に至る訳だが、今の今まで写真でしか見たことがない林を、この際一度は見ておこうという気になった。

そこで、契約の意向について返信する際、見学会に参加希望としておいた。6月に挙行予定だったはずだが、案内はなく、8月も入った今になって、動画の入ったメディアとともに、案内が来た。それによると、「急斜面で足場も悪く、それなりの装備が要るが」と、動画を見て再考を促す内容だった。

確かに急だ。確認のうえ連絡をくれとのことだったので、中信森林管理署に電話し、聞いてみた。信州ならではの朴訥としたというか、とっかかりのなさげな(悪気はないのだろう)やり取りから窺い知るに、現地へは歩きで、参道から行き帰りで1時間ほど、途中川を渡るが橋はなく、適当に何かを渡して通ったり、といった感じらしい。まあ要するに都会者がサンダルやスニーカー履きで気軽に行くような場所ではない、といったことだった。

迷いはしたのだが、話を聞いてみて、行くことにした。そんな機会でもないと、信州の山林に足を踏み入れることなど、多分もうないだろうし、一応、一度は見ておかないと、ただただ権利を引き継いで金だけ入ってくるというのも釈然としないなと思ったからだ。それに、コロナもあってすっかり出不精に拍車がかかり、今の車に乗り換えて出かけた一番遠い所は、御殿場のアウトレット。車でロングドライブに出かけてみたかったりもする。

出向くのは9/7(水)を予定している。また行ったら様子を書き留めておきたい。