Chaka Khanは名盤”Chaka”で”I’m a woman in a man’s world ~~”と歌った。自分が歌うならさしずめ、”I’m a gay man in a straights’ world ~~”だろうか。
今いる会社は、セクシーとかセクシャリティーとかセックスとか、そういうものから遠く離れたところにあるので、そこにいてもそんな心情になることはほとんどない。業種的に、セクシーとかファッショナブルという要素は、まるで検閲でも受けたかのようにきれいに排除されている。（早い話が、イケている人は皆無だということだ）セクハラ規定は厳格に守られており、触法行為はおろか、下品な話さえも自分の身の回りには存在しない。それはいいことである一方で、かといって先取の気風がある企業のように、性的指向による差別禁止規定もなければ、LGBTのコミュニティーもない。つまり、一日の時間の多くを費やす場所である会社で考えればいいのは仕事のことだけであり、仕事上の能力だけしか求められない。会社の人間にこちらが求めるのもまた、仕事上の能力（とオフィスにいるうえでの最低限のマナー）だけだ。これは、クリーンで面倒でないという点ではありがたいが、それでも自分のアイデンティティーの一部を切り捨てた生活をしていると、時々疲れる。
そんな時にジムに行くと、ゲイがちらほらいて、同じ属性の人が世の中に生きているのだなあという実感を持ったりする。ゲイがジムに行くのは身だしなみのようなもので、ジムに行く≈（≒）ゲイコミュニティーに触れる、といった感じだった。
それが、行くジムを府中のジムに変えたとたん、そんな感じでなくなったのだ。ゲイがほとんどいないのである。一昔前のティップネスほどではないにせよ、支店によってはゲイのいる比率が高くてわずわらしいと感じられるチェーンのジムの一支店なのに、ぽっかりと、いないのである。理由をいくつか考えるに、
- 場所が郊外。新宿からだと特急で20分らしいが、実際はけっこうな距離。
- 設備が狭い。特に水回りがシャワーと小さなサウナのみで簡素。
- ↑であるところに持ってきて、近くにコナミスポーツがあり、そちらは広くてスパ・温浴施設もあるので、客を取られている。
といったところか。今いっているジムはそんな条件の所なので、いきおいコナミではウェイトが足りないとか、より高いトレーニングレベルを目指しているとか、フィットネスクラブだとちょっと気後れするから、ジムらしいジムがいいという人達が来ている。府中といえば、東芝府中があって、東芝府中といえばラグビー部。そこの所属だかどうだかは知らないが、ゴツい感じのストレートが、多少小さくはあるが、ウェイトは一通り満足の行くものあがあり、コナミスポーツに客足を取られて空いているところで、エッホエッホとトレーニングに勤しんでいるのである。
世の中のゲイには、ノンケ好きという人がいて、まあそういう人ならヨダレのひとつも垂らしそうなものだが、俺は可能性のないことかつ相手が望まないところにその種の好奇の視線を投げかけるつもりはないので、（といっても、じゃあゲイがあちこちにいるジムだったら湿った視線をしていたかというと、そういうことも決してない）彼ら同様、黙々とワークアウトしている。
そんな所なので、人間を観察するにしても彼らしか観察対象はいないのだが、見ているに、こんな特徴がある。
- ワークアウトウェアーは割とまとも。ファッションとして気を使っているという感じではないが、まあまあちゃんとしている。
- ジムに来る服装も体オタクといった感じではなく、平均的な若者像といった感じ。
- が、下着は伸びきったトランクスなど。
- 2、3人の仲間でワークアウトしていることが多い。
- マナーは割とちゃんとしている。（学生のグループはやや難あり。しかしまだ目をつぶることのできるレベル）
- ボディービルダーは非常に少ない。大抵は何か競技歴のある人とか、格闘技系とか、あるいは単に体を鍛えることが好きな人達であって、シェイプとして体を追求しているわけではないので、セックスアピールという点では隙のある体。
- 何故かシャワーを浴びずに帰る人が多い。
- という環境なので、女性は数％。
ジムというと、今まで行っていた所は肉体を意識する空間であったのに、ここでは身体能力がまず第一に意識される空間なのだ。ジムに対するアプローチで、ゲイとストレートの違いが大きく違うとすれば、そこかもしれない。なので、身体能力も問題ではあるが、肉体にフォーカスしてワークアウトしてきた自分にとっては、文化の違いが大きなものに感じられるのだ。
I’m a gay man in a straights’ world.