まっずいプディングに見るのれんの意味


この前、いただきもので和光のチョコレートプディングとノーマルのプディングを食べたんですけどね。まっずいの。(笑)←笑い事じゃない

パートナーじょにおが実家からもらってきたんだけど、じょにおが手渡すなり曰く、「美味しくないですよ」って。でもとりあえず冷蔵庫に入れて冷やしておいて、俺が開けて食べようとすると、「食べるんですか? 知らないですよ?」とまで言う。「えー、そこまで?」と思って食べてみたら……まっずいの。(怒)ただただ甘ったるいだけで風味がなく、香りも薄く、食感はもっさりネットリしてるだけで舌触りがよくなく、後味が気持ち悪い。ただただノペーっとしてるだけで、形状としては、いうなれば掃除していない台所の排水口にでもこびりついてそうなものって感じ。ホームページの商品紹介には

ムースのような濃厚な味わいを楽しめる風味豊かなチョコレートプディングと、新鮮な牛乳と、ヨードを多く含んだ卵をふんだんに使った贅沢なプディング

ってあったけど、もうこの説明文からしてダメ。濃厚なムースってのはあり得るけど、ムースは元来軽やかなもの。てか、だからこそムース。そして濃厚なムースってのは、きめ細やかでなめらかな味わいと味の奥深さの両立が濃厚と感じられるのであって、濃厚というのは砂糖の含有量や物質的密度の問題ではない。それが、まるでなってなかった。食べてて怒りを感じるほど。完全に失格。完食したかって? いただきもので悪いんですけど、1口食べて「マッズー…」 → 何がいけないのか確認のために2口目を食べて「……(怒)……」 → 流し行き。

(´ж`;)ゥ → ( ゚д゚)、ペッ

って感じでした。(俺が顔文字を使うくらいレアな経験)チョコも、ノーマルもね、 まっずいの。(恨)←3回も書けば十分

まあもともと和光は高級品取り扱いの店と自称して宣伝してはいるけど、物が分かっている通の人達からの印象は、「ちょっと趣味の悪い名前好きの年寄りが金の使い道を知らずに習慣で買い物をするだけの所」って感じで、名倒れ大将。このプリンも戦中に砂糖不足を経験したそんな世代向けの食べ物か。しかし今回あらためて名倒れ大将決定。

で、ブランドって何かというに、信念や哲学を持っていい物を作り続ける宣言たるのれんがブランドであって、ブランドだからいい物ではない。長く広範なバリエーションのなかには、失敗だったり、イマイチだったりするものも出てくるかもしれないが、それは「一生懸命やったけれども結果いまひとつだった」という、真摯な姿勢の一貫性がなくてはならない。だからこそ、人はその失敗を許し、ブランドへのローヤルティーも維持されるものなのですな。そして、良いものを選ぶセンスというのは、レーベルよりもその物自体に着目して良いものかどうかを判断する能力であり、そのブランドのことは自分の趣味や品質への要求を満たす蓋然性が高いから好きにはなっても、手放しで「そこのならOK」とするのは、思考の放擲、つまり自分のものを見る目を捨ててしまうことになるので、センスのいい人はそれをやってはいけない、そう思う。

気づけば、自分の身の回りには、いわゆるブランド品とされる物が多かったりもする。物作りを真剣にやっているブランドハウスは世の中に確かに存在するわけで、自分がいいと思って選んだ物がそういうブランドハウスの作であったということは、いわば当然の出会い。そして、インディビジュアルな物に着目して買った→それがそこのブランドであった、という流れの体験を複数回重ねると、「そういういい物を出すなら、そこののれんの中を覗けば自分が探している他のものもあるかもしれない」という経験則から信頼が生じる。「いい経験をさせてくれる所かもしれないですよ」という目印がブランドというのれんであるけれども、目印は目印でしかない。

でも、常に確認を怠らないというのは面倒なことだから、人はだんだんその目印=信頼できる物というふうに、経験則を高めていく。良い体験をすると、人間は反復する癖があるから、そこでちょっとの裏切りがあっても、「でも、あの時良かったから…」と、再びそこを訪れる。そこで、のれんを掲げる側に高慢や甘えが生じると、「人が相変わらず来てくれるんだから、いいや」と、物への信念や物作りへの哲学を忘れる。かくして、客:「イマイチだなあ、でもあの時…」→店:「ま、こんなもんでしょ(さらに落ちる)」→客:「またイマイチだなあ、でもあの時…」→店:「ま、こんなもんでしょ(さらに落ちる)」…の負の連鎖で、のれんはのれんの意味を成さなくなる。そんななか、客がふと「あ。もういいや、ここ」と思ってしまったら、もうおしまい。かくして、のれんは下がっているけれども中身はすっからかん、盲目的ブランド信仰者(ほとんどマルチや新興宗教に入った人たちと変わらない)だけがうろうろ、というパターンになるわけですな。

何をたかだかプリン1つでそこまで考えるか、って? いやいや、食べ物、特にデザートは喜びのために食べるんですよ? その喜びへの期待感を裏切られた残念さったら、ないんです。あ、あと、残念プリンは2つでした。あーあ。週末は美味しい物を食べよう。<>