癌の記録 ある徴候


これを記す前に、本当はパートナーじょにおとの間で作成し、認証を控えているパートナーシップに関する公正証書についてのことをまとめて書いておくべきかもしれないが、それは認証を終えてからまとめて書くことにして。

10月初旬の手術待ちで、担当医には「これで今の段階はおしまい、することはないです。普段どおりの生活をしてもらってかまいません」と言われてはいるものの、やはり気づくと常にこのことを考えている。バロウズは、苦痛とはその大小よりも持続する時間の長短だ、みたいなことを確か言っていたが、まな板の上の鯉は、まな板に登るまでの時間、何を感じて過ごすのだろう。

3、4日前から、右脇の下のリンパ節に違和感がある。実は、術前に引くまい引くまいと思っていたにもかかわらず、風邪を引いてしまい、今はその風邪はもう峠をとうに超えて、幸いにしてもし「明日から入院」と言われても手術には影響を与えなくて済みそうなのだが、その風邪引きと相前後しての、リンパ節の違和感。探ると、すこしグリグリしているような気もする。しかし、違和感は持続的なものでなく、鬱陶しく感じられる時もあれば、ふと気づくとそうでもないこともある。

そもそも、今回悪性腫瘍の発見と手術(予約)に至ったのは、首の左側のリンパ節の腫れがきかけだった。それだけに、リンパ管が全身繋がっていることを考えると、嫌な感じもする。手術直前で、入院が決まったら医者に言えばいいかとも思うものの、気がかりなので、再診予約を取ることにした。もともと、疲れるとリンパ節が腫れたりといったことは過去あったので、そういう類のものであるかもしれないが、何ともいえない。尤も、今回の癌の診断でさえ原発不明なので、この右脇の下のことを訴えても、医者もなんともしようがないかとも思うのだが、少なくとも、手術に至るまでの体の記録として、記録しておいて悪いことはなかろう。このsymptomが何かの徴候であるのかどうか。

こうして記録を書いていて、冷静でえらいですね、と言われることがある。事実はあるがまま、というのがもともとの俺の性質なので、その性質から必然こういう書き方になるのだが、実は、泰然自若としているように見えて、色々考え込むことがある。夜、床に就いて2時間を超えて寝付けない場合がままあり、睡眠導入剤を処方してもらってある。

例えばこの先がそう長くないとして、自分にはそんな運命を科せられるだけの不道徳であったかな、と振り返ることがある。答えはイエスだ。ちゃらんぽらんで、無責任で、気ままで、厄介事のコアは他人に任せてしまって(自分の人生では困難時には誰かがそんなことを引き受けてくれてしまう誰かがいつもいた)。そんな経緯であれば、「貴方、もうこれ以上はいいでしょう」と言われてもしょうがない気もする。

そんな一方で、そんな思いが杞憂に過ぎず、「まああれはほんと結構大変だったよね」と、後になって振り返りつつ、また穏やかに日常に戻っていく気もする。それに、今パートナーじょにおとの生活を築いてきて、俺の生活はもう俺だけのものではない。それを「もういいや」とうっちゃるのはあまりにも無責任すぎるし、もちろんそうしたくはない。

まあ要するに、案じてもしょうがないことを考える自分の悪い癖は、こういう時にも見事に発揮されてしまっている、というだけのことなのだが。早いところ、この鯉をまな板に乗せてくれないものだろうか。

追記:結局この脇のリンパ節の違和感は、癌ではなく、対処するべき癌は左扁桃腺と左首のリンパ節に限局されていた。

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4 Replies to “癌の記録 ある徴候”

  1. こういう記録を書いて冷静だとは僕は思いません。どちらかと言えば、記録を書くことによって冷静さを取り戻しているのかなと思っていました。
    また同い年として、今まで生きてきて不道徳であったかなという件にはとても共感しました。自分も過去を振り返るとちゃらんぽらんに生きてきたように思います。
    どうぞ、手術が上手くいって、そんなこともあったね!と言える時が来るといいですね。

    1. 何首烏。>
      そうですね、書くことによって頭の中のモヤモヤを整理できている感じはします。「わが人生に悔いなし」という人が時たまいますが、一片の曇りもない人なんていないのでは、と。正邪併せて考えてどうにか辻褄はあった程度ではないのかなというのが一般的ではないでしょうか。
      手術はおかげさまでうまく行き、退院して今自宅療養中です。またその次第はブログに記したいと思います。ありがとうございます、

  2. 拝読しました。パートナーさんのサポートもあって、しっかり治療を受けられたとのことよかったですね。気をつけてこれからもお幸せに。

    1. Masatoさん>
      ありがとうございます。幸いステージ1で、手術でしっかり取れば大丈夫と言われ、今は普通に生活できています。パートナーには感謝です。

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