名園巡り 旧岩崎邸庭園、六義園、旧古河庭園


よく晴れて寒くもなかったので、前々から訪れてみたかった庭園巡りをしてきた。パートナーじょにおは今日は仕事で、こういう趣味に付き合わせる友人も思いつかなかったので、一人で出かけた。行こうと思った先は、旧岩崎邸庭園。三菱財閥の三代目、岩崎久彌が築いた岩崎邸宅本宅である。

今回は写真をたくさん入れた。クリックするとオリジナルサイズが見られる。

場所は、不忍池の近く。不忍池というと上野だが、歩くには御徒町からの方が近いらしい。

旧岩崎邸に向かう途中で見かけたビル。いい味を出している。
旧岩崎邸に向かう途中で見かけたビル。いい味を出している。

さて、不忍池の端を抜けて、旧岩崎邸へ向かうわけだが、(住所もまさに「池之端」)向かうにはラブホテルの林立する所を抜けていく。建物が立った頃には、そんな土地になるとはよもや思わなかったことだろう。公園に散策に向かう平和そうな人が、何やらイカガワシイ雰囲気の所を、努めて平気そうに歩いていくのは、何だかそぐわない雰囲気。

旧岩崎邸は、長くカーブしたアプローチを登ってゆく。登ってゆくと、石敷きの道の横に、ちらりと建物が見える。

長いアプローチから見える山荘風の建物は…
長いアプローチから見える山荘風の建物は…

これ、質素に見える建物だなあと思ったら、

建物は撞球場(ビリヤード場)。
建物は撞球場(ビリヤード場)。

1世紀以上前の家に、ビリヤード場があり、しかもそれだけのために建物を建てているのだから、威容のほどが分かろうというもの。しかも、これは本邸に入ってその脇にあるのである。そんなカウンターパンチを食らわせておいて、いよいよ本館の洋館が見えてくるわけで、訪れた人は「恐れ入りました」となる訳だ。

袖塀。三菱のマークの基になった岩崎家の家紋入り。
袖塀。三菱のマークの基になった岩崎家の家紋入り。

で、本館は、こんな感じ。

コロニアル風で、東京にあることを忘れさせる。
コロニアル風で、東京にあることを忘れさせる。

邸内は撮影禁止。見て回るに、とにかく手がかかっている贅沢さに感銘。壁紙ひとつとっても、革にエンボス加工をして箔を乗せていたり、窓枠が嵌め込まれた壁の間を、組紐でパイピングしていたり。贅沢さとは、スペースやら原価やら、そういうものに加えて、こういうところに真髄があるものだ。

とにかくあらゆる所に人の手がかかっている。これは撞球場の雨戸の取っ手。
とにかくあらゆる所に人の手がかかっている。これは撞球場の雨戸の取っ手。

庭も明るく、どこまでも広がっている。現在庭園として残っているのは、ほんの僅かで、前は周辺域をもっと含んだものだったそうだ。

庭から見た邸。
庭から見た邸。
庭も広大。
庭も広大。
庭から見た光景。(パノラマ)
庭から見た光景。(パノラマ)

面白いと思ったのは、これは接客や年1回の岩崎家の集まりに使われるのみの家なのだが、そんな社交の場所には普通考えるともっと重厚感を感じさせる建物にするところを、こんな明るいイエローの、(外見は)軽やかな家を仕立てたこと。

* * *

旧岩崎邸を後にして、御徒町の駅に戻り(大衆の見本市のような場所で、何とも不思議な感じとともに、自分がいるのは現代なのだなあと実感)、駒込駅に向かう。次の目的地、六義園は駒込駅から程近い。何故六義園に行こうと思ったかというと、もともと旧岩崎邸庭園には行ってみたかったのだが、六義園は徳川綱吉の側用人・柳沢吉保が、自らの下屋敷に開園させたもので、その後荒れていたものを岩崎弥太郎が別邸として購入し、手が入れられて、庭園となった場所だからだ。つまり、本邸としての旧岩崎邸を見たなら、そちらもペアで見ておくとよいということ。

さて、六義園。こちらは庭園内に八十八景を作り、池に太鼓橋など架けた純然たる日本式庭園。道はどこも曲がっていて、そこここに影があり、いかにも日本庭の風情を感じるところ。

池を臨む。
池を臨む。

つつじの名園として知られる所らしく、そろそろ見頃かと期待して行ったら、今年は春が寒いので、まだつぼみが硬いものも多く、五分咲きといったところ。ゴールデンウィークには、見頃できれいだろう。

つつじ巡りができる山。
つつじ巡りができる山。
都内とは思えない緑とその広さ。
都内とは思えない緑とその広さ。

東京に長年いながら、こんな所も見ていなかったというのは、まだまだ東京を知らないなあ、などと思いながら歩いていた。ひとしきり歩いて、帰ろうかと思ったが、六義園の入り口に、旧古河庭園の案内が出ている。六義園は駅の南側、旧古河庭園は駅の北側。せっかくなので、そちらも見てみるかと急に思いつき、足を伸ばした。時間を見ると、4時過ぎ。たいていこういう所は4時半に入園を締め切ってしまうだろうからと思い、若干早足で、駅からの道を15分ほど歩く。

到着すると、ちょうど4時半前。滑り込みセーフ。何となく陽も傾いてきて、園内は少し寂しい雰囲気。

夕暮れ近い旧古河邸。
夕暮れ近い旧古河邸。

期せずして見ることにした旧古河邸だが、面白い対比に気づく。この建物も、旧岩崎邸と同じ建築家ジョサイア・コンドルの設計になるものなのだが、旧岩崎邸がコロニアル様式で、三菱財閥の本邸としてはいささか軽やかすぎるようなものだったのに対し、こちらはどっしりとした、ヨーロッパの建物を感じさせる石積みのもの。

庭から邸を臨む。(パノラマ)
庭から邸を臨む。(パノラマ)

こちらの庭は西洋風で、バラが見ものらしい。ただ、もちろんこの季節はまだ咲いておらず、夏前頃に行くのがいいのだろう。

庭は西洋風。よく刈り込まれている。
庭は西洋風。よく刈り込まれている。

そしてこちらにも池がある。池やその周辺は、純和風。西洋風にするのが文化であり、ステータスであった時代でも、和風を捨てずに取り入れているのが興味深い。

水鳥のいる池。
水鳥のいる池。
茶室がある。表千家の茶稽古が開かれているんだとか。
茶室がある。表千家の茶稽古が開かれているんだとか。

ところで、この旧古河邸内だが、見学には時間が決まっていて、公園事務所に申込むのだとか。建物内部を目当てに行く場合は、注意が必要。園内を巡っているうちに、閉園の時間が近づいてきたので、ここを後にし、駒込駅に戻る。ここの住所は北区。めったに行かない場所だなあと思った。

今回訪れた庭園の地図はこちら(Googleマップ)

さて、この名園巡りシリーズ、気が向いたらシリーズ化しようか。