オーベルジュでの祝いから帰ってきて、その夜。飲もうと前々から準備しておいた1本を開けることにした。オーベルジュではAlfred Gratien Cuvée Paradis Brutを飲んだところだというのに、2夜連続でトップキュヴェとは贅沢なことだ。さて、今回の1本は、Amour de Deutz Brut Millesime 2003(アムール・ド・ドゥーツ ブリュット・ミレジメ2003)。麗々しい箱を持ってくる。
説明書きは、ミュズレーについて(後述)と、透明の瓶に入っているので変質を防ぐため遮光性を維持して箱に入れて保管しておく旨の2つ。紙は6ヶ国語表記で、日本語もある。しかしこれほど贈り物にされることが想定されているシャンパーニュはそうない。かくいう俺も、これをプレゼントとして贈られた一人なのだが。
さて、Deutzはアイ村にあるメゾン。我が家ではシャンパーニュを嗜むきっかけになったのがDeutzであることもあって、おなじみ。アイ村にはDeutzの他にもGosset、Ayala、Bollingerと、そうそうたる名門メゾンが並ぶ。どこもリッチでパワフル、そして奥深く変化に富んだ味わいが素晴らしく、そのどれもが個人的にお気に入り。そしてアイ村といえばパワフルなピノ・ノワールで特に有名。BollingerのLa Grande AnnéeやHenri GiraudのCode Noirなんかはその特徴が活きている好例だ。
Amour de Deutzはそんなアイ村にあるDeutzのトップキュヴェ。ちなみに某航空会社の近距離便のファーストクラスではこれがサーヴされるらしい(関係者情報による 笑)。意外にもアイ村特産のピノ・ノワールは用いられず、ブラン・ド・ブラン(シャルドネだけで作られるシャンパーニュ)。そのシャルドネの内訳はド・スーザやジャック・セロスといった作り手で有名なアヴィーズ村産50%、サロンやクリュッグのあるル・メニル村産45%、ヴィレ・マルムリー村産5%。
Amour de Deutzは、「アムール(愛)」と名付けられているところ、そしてドゥーツお馴染みの天使のモチーフから女性に人気のようだ。透明なボトルに入っているのもロゼ以外のシャンパーニュでは珍しい。ミュズレーはモラビトのデザインによるもので、ダイヤモンドが埋め込まれている。これはペンダントにもできるように紐を通せる作りになっていて、ご丁寧にも紐までついている(する人はいないだろうが 笑)。
さて、さっそく開栓すると、香ばしい発酵香が広がる。グラスに注いだ時の泡は、最初層がかなり厚い。落ち着くと、きらきら立ち昇る様子が華やかで可憐。
口に含むと、さあっと花々が広がるような華麗な印象。そして品の良い酸、ミネラル感、シトラスのような青いりんごのようなフルーツのタッチ、ナッツなどの香ばしさ、それらが複雑に絡み合い、しかも破綻することなくまとまっている。いわば最上のフィネス。文句なく上等な感じ。そうした特徴はいかにもブラン・ド・ブランのトップキュヴェのイメージなのだが、どこかにしっかりした芯もあって、それは何かといえば、紛れもなく飲みつけたDeutzのテイスト。これはDeutzでなければ成し得ない見事なキャラクターをもったブラン・ド・ブランなのだ。
にこやかにほがらかに接せられているようなこのシルキーな飲み物は、泡も美しい。
そして、酔い心地も軽い。まさに天使の贈る飲み物のようで、シャンパーニュにおける上質とは何かをあらためて認識させられた1本で、これをお祝いとして飲むことができて幸運だと感じた。じょにお、ありがとう!