入居から約3ヶ月半経って、ようやくひと通り室内が整った。新居ではインテリアにこだわった。その要因は主に3つある。
まず一つは、快適に住みたいということ。もちろんこれが主目的。機能の面からも、美的観点からしても。
そして二つ目は、住居のネガティブ要素を克服する狙い。新居は駅間近で、周辺は既にずいぶん前から開発が済んでおり、建て込んでいる。そのため眺望が望めない。そこで、インテリアを整備して意識を室内に向けさせるようにすることで、そのネガを解消することを狙った。そもそもマンションは外観に手を加えることはほとんどできないし、インテリアに全振りして手をかけたといってもいいかもしれない。
そして三つ目は、家を住み替えるという我々のライフステージの第二幕として相応しい舞台になるよう、パートナーが計らったということ。在宅で仕事をする俺のことを慮ってもいて、長い時間を過ごすに適した空間にすることを考えてくれた。俺一人では到底実現はできなかったことを現実化してくれたパートナーには、感謝の一言では足りない。
インテリアのテーマ
と小見出しを打っておいて何だが、我々は事前にテーマを決めた訳ではない。よく、インテリア成功の秘訣として「テーマを設定するのが大事」と言われる。それは統一感という点では有効と思う。が、どういうスタイルを採用するか決めた場合に、どこかで見たようなものになりかねず、ともすると、住居を人に住みよいようにするはずが、家のスタイルに人の生活をあてはめる逆転現象すら生じ得る。テーマを決めなくとも、ある程度好みが定まっていれば選択眼は一貫する訳で、テーマという束縛をかけない方が、「それ風」というところから一歩抜け出て、真に住む人にフィットしたものになると思う。ただし、そうするために物を判じ取捨するための眼を涵養しておく必要はあるが。
そうした訳で、我々は自分たちの感覚に沿ってインテリアを決めて行った訳だが、単に好みでというその選択には「なぜそれを選んだのか」という考えの裏打ちがある。設えが整ったたところで、この日記ではそれを言語化してみたい。
Chic(シック)
まず旧居がどうだったかと振り返り、新居と比較して考える。旧居のインテリアは、どちらかというと軽やかでカジュアルだったと思う。

ドアや窓の棧の色が明るく黄色味の強いチークだったことや、窓が多かったこと、キッチンパネルのカラーが築年当時の傾向を反映したくすんだブルーであったことなどから、そこに合うタッチの物を選んで揃えた。当時のインテリアトレンドの影響もあると思うし、二人の生活をスタートした時から徐々に物を買い替えたり揃えたりして行った累積が、旧居のテイストだった。
旧居は、パートナーが俺と知り合うタイミングの直前に購入し、まずパートナーが住み始めてから半年で俺が越してきて、同居を開始した。最初は家具も持ち寄りでスタートした。

これに対し、今回の住み替えは、年月を重ねるにつれ、経済的にも趣味的にも成長したこと、そして新居の建具や壁、床といった目につく箇所のカラースキームが落ち着いた色調であることから、ややシックで落ち着いた感じが基本になった。

「やや」とニュアンスをぼかしたことについては後述する。
Modern(現代的)
モダンな物を好む我々の傾向は、以前よりも強まっている。しかしこのモダンという語はカバー範囲が広く、バウハウスやミッドセンチュリーも、それまでの装飾美をよしとする趣味からすればモダンだし、もっと時代が進んでミニマルがあったりした後、ニュアンスの違いを楽しんだり造形がアーティスティックであったりする2020年代のトレンドももちろんモダン。どのモダンを採り入れるかによって印象は大きく違うが、少なくとも我々は、クラシックな物よりモダンな物を嗜好していることは明らか。

Textured(素材感のある)
それぞれの空間に奥行きを出したい時、テクスチャーを選ぶのは重要。そして素材感は心地よさをもたらす。やりすぎると要素同士が喧嘩するので、各部とのバランスを見ながら、表情を楽しめるようにした。

Updated(進歩)
ここ5、6年で、世界的に見てもインテリアの傾向は急速にアップデートされたように思う。新居をこの物件と決める前に2017年築の中古物件を購入候補として内見したのだが、何となくもっさりした感じがして、今の感覚とは確実に異なっていると感じた。2010年代に比しても、今は情報がより早く行き渡るようになり、結果、インテリアに関して言えば、イケアに代表されるローコストプロダクトにもトレンドはすぐ反映されるようになり、質は別として、見た目は進歩した。
そうした進歩に連れ、かつてはまあよしとして多少妥協しつつ選んでいた物が、今ではより感覚にフィットする物が選べるようになった。それに、技術的に進歩した結果可能になった物もある。その辺りをうまく取り込みたい。

Comfortable(快適)
デザインにはこだわりたいが、住居空間は日常生活を営む所なので、快適さをないがしろにする訳にはいかない。脱ストレスは必須。例えば椅子にエッジが効きすぎているとか、形や色は面白いが主張が強すぎてずっとそこにいると神経を刺激され続けて疲れてしまうとかでは、「生きることを支える拠点」としての住居の本質から乖離してしまうので、快適さは譲れない基準だ。

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