ブックレビュー 伊藤計劃×円城 塔

屍者の帝国 (★★★★☆ 星4つ) 早逝が惜しまれる伊藤計劃の後を継ぎ、伊藤が生前交流のあった円城 塔が書き上げたという異色の小説。これを円城が書いたのは相当大変だったのではないか。伊藤も才能のある小説家だが、他者の着想…

ブックレビュー 小川洋子

完璧な病室 (★★★★☆ 星4つ) 表題の作品を含む短篇集。小説はエンターテインメントのひとつとしてやたらドラマティックな物がもてはやされる昨今だが、自分の知っている世界を持ち札として、細かく細かく世界を描き出してゆくと…

ブックレビュー 小川 糸

食堂かたつむり (★★★★☆ 星4つ) あまりこの人のことを知らずに読んだ。いかにも女性向け、しかも若い人向けの文体で、主人公もそんな年齢設定。難しい言葉は使わず、文章も行変えが多くて、字面が白い。吉本ばななを思わせるが…

ブックレビュー 長塚 節

土 (★★★★☆ 星4つ) 表紙には「娘が年頃になって帝劇がどうのと言い出したらこれを読ませてやりたい」云々という趣旨の夏目漱石の言葉がある。農民文学の代表者である長塚 節の代表作だけに、中身がつまっていて、もう1世紀ほ…

ブックレビュー 村上春樹

1Q84 Book1 〈4月‐6月〉 前編 (★★☆☆☆ 星2つ) 最近は売上を稼ぐためか、まとめて書けなくなった作家が多くなったのか、その両方かは知らないが、本が上下巻セットで出たり、上中下の三巻セットになっていたりす…

ブックレビュー 三島由紀夫

太陽と鉄 (★★★☆☆ 星3つ) 三島の本は久しぶりに読んだが、三島のどこが複雑なのか、俺には分からない。本人さえ自分のことを複雑だとして売りたいようだが、とても分かりやすい。これを読めば三島が分かりやすいということが分…

ブックレビュー『芋虫』

丸尾末広(著) (★★★★☆ 星4つ) このホームページのレビューで漫画を扱うのは最初、そして唯一になるだろう。漫画は趣味でないので。さて、この『芋虫』江戸川乱歩原作というので、見る気になった。芋虫は2005年に一度映画…

ブックレビュー 貴志祐介

天使の囀り (★★★★☆ 星4つ) 『クリムゾンの迷宮』が、常に予想の範囲内に収まり続ける展開なのに対し、『天使の囀り』は期待している裏切り=意外性をくれるので、ホラーに馴れた人が読んでも楽しめるだろう。先を読み進めたい…

ブックレビュー いしいしんじ

みずうみ (★★★★☆ 星4つ) 分類するなら幻想小説ということになるだろうか。物語は三部構成になっている。月に一度村を水浸しにするみずうみと不思議なしきたりに暮らす村の話からスタートして、童話を聞くような気持ちで第一部…