音楽レビュー Randy Crawford & Joe Sample


Feeling Good (2007)


(★★★★★ 星5つ)

Randy Crawfordの音楽は、優れた音楽であると分かっていながら、何故か聴いてこなかった。たまにどこかで代表曲を耳にすると「ああいいな」と思うのに、アルバムを入手してまで聴きこむ気にならなかったのは、多分彼女がジャズ寄りで、それに対して俺が好んで聴いていたのはもっとダンサブルでホットなソウルやR&Bだったからなのだと思う。同様に、Joe Sampleも素晴らしいアーティストには違いないと思いながら聴いてこなかった。

しかし、今、シルキーでスムーズな洗練された音楽を聴きたくなった時、かつてのブラコンサウンドやクワイエット・ストーム的なものがほとんど捨てられてしまった現在のソウルやR&Bにはそれを求めにくいので、Randy CrawfordとJoe Sampleといういわば黄金コンビは魅力的に思え、5年前のアルバムではあるが聴いてみることにした。

結果、大正解。まさに求めていた音。Randy Crawfordの、どこか哀愁を帯びた声質、決して猛々しくシャウトはしないが時に見せるソウルフルな響き、ブルースのような土臭さと都会の洗練が同居する歌い口に、一聴してJoe Sampleと分かるキャラクターの際立った歌うようなピアノフレーズが組み合わさると、音楽の流れる空間が清浄化され、香気に満たされるような感じがする。そしてその音楽は、ただ心地良いだけでなく、耳を傾けさせる深さがあって、上質なミレジメのシャンパンのよう。知性ある大人は、こういう音楽を聞いてほしいものだ。(2013/2/1 記)

追記:2014年、惜しまれつつJoe Sample永眠。体調不良で来日ライブがキャンセルされた後のことだった。本当に悔やまれる。