音楽レビュー Blue Six


Signs & Wonders (2014)



(★★★★★ 星5つ)

しばらく新譜を聴いていないなと思っていたら、去年出ていた。音は相変わらずのミニマルでディープな世界だが、その中でもどこかrawでエモーショナルな方へシフトしてきたように思う。Naked Musicレーベルでの立役者といってもいいAyaは本作でもボーカリストとしてフィーチャーされているが、”Anhedonia”という曲では今までの繊細で細い歌い方から、意図的に地声に近い、低いキーで歌う方法に変わっていて、そこにも変化を見た。

しかし全体としては紛れもないBlue Sixの世界。この種の音楽は聴き込むよりも空間を埋める音として聴かれることが多いと思うが、そうした場合には数少ないアルバムを繰り返しかけるよりは、同じ傾向でバリエーションがほしい訳で、そうしたニーズにこのアルバムは確かに応えることができるだろう。
しかし、細かく聴くとこれは単なるバリエーションでなく、エボリューションであると捉えることができる。白玉系(全音符のコード弾き)使いはより抑制されて「タメ」が表現されているし、深さを表現する方法としていたずらにリバーブやディレイで余韻を演出するのではなく、音と音との間を整理することで、世界により惹きつけるやり方を体得しているように聴こえる。単なるオシャレサウンドに終わらないこの世界は、体験すると癖になる。(2015/4/7 記)

Noesis (2010)



(★★★★★ 星5つ)

Blue Sixの3枚目のアルバム。音は既に完成しつくされている。ミニマルなディープハウスだけに、新しい展開に苦労しそうだが、その一聴してすぐBlue Sixと分かるアイデンティティーが強みであり、それがゆえにこのアルバムはNoesis(対象物を見てすぐその意味づけを認識すること=哲学用語)と名付けられたのかもしれない。
クリック音にも似たパーカッション、サイン波に限りなく近いシンセサイザー音が、禁欲的なはずなのに、艶っぽく、深みを感じさせる音世界を構築している。ジャケットデザインは若干俗っぽい。

Aquarian Angel (2007)



(★★★★★ 星5つ)

Naked Musicレーベルらしい、ミニマルでディープな世界が展開されている。SweetbackにフィーチャーされていたAyaのアルバムのまとまり感や、後発のNaked Music名義のアルバム”Re-Creation”などと聴き比べると、若干味が薄いか。しかし上質で精神性が高いので、聴きよい。夜に読書などしながら、あるいは酒を楽しみながらにぴったり。ドライブにもよい。