音楽レビュー Quentin Harris


Sacrifice (2010)


(★★★★★ 星5つ)

暗いダブ風のリフに乗るエモーショナルなボーカル、16分音符で刻まれるハイハットやシェイカーなど、90年代のデトロイトハウスを思わせる…と書こうとしてQuentin Harrisの公式ページを見たら、はやりデトロイトベースの、とバイオグラフィーにしっかり書かれてあった。

ともかく、そんな感じの音が好きなら・ゴリゴリのハウスと言われながら最近のNYハウスが今ひとつパンチが足りないと思うなら、是非聴いてもらいたい。アバンギャルドで、ダークで、危険で、その先に見える世界は、突き抜ける苦痛の末の快楽を発見するハードSMのような精神性を伴っている。ラストトラックの”Home”は涙が出るほど美しい。

このアルバムでは様々なボーカリストがフィーチャーされているが、その中にUltra Natéもいて、メジャーになって角が取れすぎたかのような印象のUltra Natéが、本人のアルバムよりもUltra Natéらしいのは、Quentin Harrisがハウスリミキサーとしてだけではなく、プロデュース力も持っている証拠だろう。いいグルーブの本物のハウス。