Disco Crash (2012)
(★★★☆☆ 星3つ)
Bob Sinclarは今までマッシュアップ物とか、VS物とかでいい加減にしか聞いたことがなかった。これでまともに聴く気になって、プロフィールを調べて初めてフランスのハウスリミキサーだと知った。音が全然フランスぽくなかったので、まったくそうは思わず、従って名前の読みも、ボブ・サンクラーではなくボブ・シンクラーだと思っていたくらいだ。
さてこのDisco Crashなのだが、ハウスとは、とか、リミックスとは、というところから色々考えさせられてしまった。音は脳天気で、そこでは考えさせられることがない。が、サウンドモチーフが、Eurythmicsだったり、2 Unlimitedだったり、Armand Van Heldenだったりして、既にヒットを獲得している曲のフレーズを用いるのは、ずるい。
でも、考えてみればハウスサウンドがクラブでブレイクした頃、リミックスといえばサンプリングサウンドで、あのBlack BoxだってLoleatta Hollowayの大元があって初めて成り立った音楽なのだから、Bob Sinclarもこれでいいといえばいいのかもしれない。当然、今の時代にあってはちゃんと権利者にお金も払っているだろうが、何だか釈然としないのは、ハウス黎明期のサンプリングによる音楽の再構築とは意味が異なって、もはやいわゆる「大ネタ使い」は、使い回しにしかすぎないように聴こえ、クリエイションの意味で疑問に思ってしまうからなのだ。
それは、ゲストボーカルにしてもそうで、前はアーティストとアーティストの個性のぶつかり合いや相乗効果が面白かったのが、最近ではみんな徒党を組んで、音楽互助会のようになっている。つまり、誰かの売り出しのために誰かが加担して、その代わりまだ違う誰かがその人と「コラボ」して…というのは、音楽の売り出しのためであって、芸術のためではない。何が「アーティスト」か、と思う。
そうすると、このアルバムで例えばSnoop Doggがフィーチャーされていようとも、ふーん、としか思わなくなる。そんな訳で、聴きやすい踊れる音楽にもかかわらず、音楽をやることの意味って何なのだろうかと考えると、どうも素直に良いとは思えなくなってしまった。